6月セミナー開催レポート帰国生受験を親子で乗り切る!保護者に求められる6つのサポート~ パート①「学校選び、願書作成編」~
6月2日(日)に開催された無料セミナーでは、株式会社京進 古川泰史氏をお招きし、「帰国生受験 の保護者サポート」についてお話いただきました。今回は、その様子をレポートいたします。
志望校の選び方
1.志望校は広く探し、受験校は秋頃をメドに決定
帰国子女入試では、日程や受験要件が変更になるケースも多く、そのため、その変更に伴い出願者数が大きく変わる場合もあります。また、受験勉強を続けていくことで生徒自身の偏差値の上昇も見込まれます。募集定員が少ない学校であれば特に、変更の影響を受けやすいものです。学校と成績をじっくりと検討し、秋頃のタイミングで受験校を選択してください。
2.物理的条件・教育方針+性格+校風で考える
・家庭の判断による選定
最近では、日本の学習環境への適応を踏まえ、海外在住歴が長い帰国子女が国内インター校を選択したいという相談が増えています。また、学校によっては「推薦入試」を帰国生であっても選択できる場合があります。帰国生だから「帰国子女入試」を検討するのではなく、我が子の最適な受験を考えるようにしましょう。
また、大学付属校の場合は「系列大学へ進学しない場合はどうなるのか」など、卒業後の進路を見極めることが必要です。実際に大学付属校といっても90%が系列大学へ進学する学校や、逆に外部受験で他大学を当然のように目指す学校もあるからです。IBコースなどを設置している学校においても、「何のためにIBコースを選択するのか」、「海外大学進学を(留学ではなく)希望するのか」など3年後、6年後の進路を考える必要があります。
・物理的条件による選択
帰国生はそれぞれの背景(在外歴・学習歴)を持ち、一般化できないものです。一人ひとりが異なる経験をしています。日本での充実できる学習環境を考えた際、どうしても避けたい項目が挙げられるかもしれません。親子で「譲れない条件・避けたい項目」を考え、子どもの希望と親が必要だと思うことを擦り合わせる必要があります。いくつか参考までにピックアップしましょう。
・通学、授業開始時間について
家から学校までの通学時間が許容範囲内であっても、授業開始時間や着席時間にも注目して、3年間(6年間)通うことを想定しましょう。できる限り学校生活を具体化して確認してください。海外では土曜日に学校があることは珍しく、日本での土曜日授業が許容できるかに関しても同様です。
・帰国生クラスについて
帰国生だけのクラスを希望しますか?そのクラスが1学年に1クラスだとしたら、3年間クラス替え がないという意味になります。子どもは人間関係が固定されることを気にしますか?子どものこころや性格に関わる部分は親でしかわかりません。学校選びには、子どもの希望と同様にわが子の特性を 見極めてください。
・学年人数・学校規模について
現在通っている学校の規模、クラス人数が大きく異なる日本の学校を選択する場合、プレッシャーを感じたり違和感を持ったりする場合もあります。
・校風について
特に重要なのが、校風です。「厳しさ、自由さ」については、時代を反映した「厳しさ、自由さ」であるため、言葉や印象だけにとらわれることなく学校を見て判断することが必要です。また、最近では「伝統校、革新校、自主性尊重型、管理型」の分類だけではまとめきれない学校が増えています。帰国生が多く、生活面で自主性を重んじる学校であっても学習面は大学受験に向けて管理型の学校もあります。子どもの経験や性格を踏まえ、ぜひ学校に「帰国生はどんな生活を送っているか」を聞いてみましょう。
・校風・教育方針以外の「暗黙知」について
学校に通う生徒が当たり前に感じる「生徒文化」、教員の「教員文化」、保護者の「保護者文化」といった、校風・教育方針以外の「暗黙知」を感じ取る必要があります。例えば登下校のルール、部活動での決まり、スマホの取り扱いなどを踏まえ、学校の「当たり前」がどのようなものなのかを感じ取りましょう。
学校見学後に、子どもが違和感を持ち「雰囲気が違う、嫌だな」と言う時は、注意が必要です。すぐに言語化できないかもしれませんが、学校への違和感は、(子どもが忘れないうちに)聞き取るようにしてください。
3.現在の学校の取り組みを知って正しく評価する
例えば、お子さまが「英語が好き」と言って英語を重視する学校を選択したい、と考えました。学校が考える、英語への取り組みが必ずしも子どもの「英語が好き」に一致するとは限りません。帰国生の英語力を大学受験に活かそうとしている(ように見える)学校もあります。英語で生活できる学校=自由な生活とは異なって、学習面での管理がしっかりされる学校もあるのです。子どもの意見の本質、興味を考え、ミスマッチを避けることを考えましょう。
願書作成のコツ
1.オンライン(WEB)出願時の注意点
オンライン出願時は想定しない問題が起きることがあります。必ず時間に余裕をもって出願するようにしてください。また、出願漏れにならないよう、家族内で「誰」が「何」をするのか明確にしておき ましょう。
・単語に要注意
オンライン出願は、学校によって表現の仕方が異なり、統一されていないため注意が必要です。「イ ンターネット出願・オンライン出願・WEB(Web)出願」のほか、「出願登録・事前登録」 のように、学校ごとの単語の意味を確認して ください。
・メンテナンス期間や受付時間に注意する
特に日本と時間が異なる欧米に住んでいる方に注意が必要なのがこちらです。日本にサーバーがある と、欧米ではオンタイムの時間帯がメンテナンス期間になる場合があります。オンライン出願は、時間に余裕をもって作成しましょう。
・オンライン出願前後の確認事項
オンライン出願前後には必ず「これで正しかったかな」と不安に思うものです。事前に必要なものを確認し、その際に疑問が生じれば、メールや電話などで疑問を解消してください。
・オンラインと郵送両方必要な場合も
帰国生用の書類の中には、オンライン出願と共に郵送が必要な学校も存在します。受験する学校により必要書類は異なり、また出願の形式(名称・順序など)もさまざまです。必ず出願要件を見ておきましょう。
・国内の住所について
学校によっては、学校からの郵便物を国内の住所に指定する場合があります。その場合、記載(やり取り)可能な国内の住所をあらかじめ考えておく必要があります。
・最新方法の確認情報
最新情報は各学校のホームページに掲載されます。自身が確認しなければ気づけないかもしれません。必ず学校のホームページを随時訪問して確認するようにしましょう。
・コンピューター用語の理解
出願環境の要件に記載されている、OS(Windows、Macなど)やデータファイルの種類(JPEGなど)や写真サイズ(3MB以下など)含め、対応可能な端末を持っているか、そして名称を理解しておく必要があります。
・ミライコンパス(miraicompass)について
2024年4月22日現在、1500を超える私立・都立小・中・高等学校が利用している情報発信・オンライン出願サポートサービスです。学校イベントの予約やオンライン出願などがアカウントを作成しておくとことで、可能になります。人気校のイベントではサーバーダウンも発生するため(海外だとタイムアウトとなる場合も)、IDだけでも早めに作っておくことをおすすめします。また、厳密な〆切時間など正確な時間管理も必須となります。
・印刷時の注意点
帰国生入試を意識しない、「コンビニ印刷」を例示しているところもあります。海外では、自身での印刷が必要です。出願日程を考えてプリンタを用意する必要があるか、プリンタがご家庭にない場合はどのように印刷をするのかを考えておきましょう。ご家庭にプリンタがあっても、通常通り作動するのかを確認しておいてください。
・提出書類は必ず2名でチェックすること
提出書類の一つ、在留証明書を例に見てみます。ある学校では在留証明書に勤務先の押印が例示されているケースもありました。海外では印鑑を用意していないかもしれません。その際はどうしたらいいか、迷うこともあります。やはり時間に余裕を持つ必要がありますね。
書類準備で注意すべき点をもう一つ。帰国生用の提出書類が入試日程や受験コースによって書類の種類が異なる場合があります。提出書類の準備は煩雑なため、必ず2名でチェックし、見落としのないようにしましょう。
2.公立高校出願時の注意
・入出国記録
公立高校では、教育委員会のホームページを学校のホームページ同様、確認してください。志願資格を確認するために「パスポートの出入国スタンプ」について言及している地域もあります。出入国スタンプの代わりになるものは何か、が重要です。というのも、昨今の自動化ゲートではスタンプが押印されないためです。
・成績証明書
英語圏ではない国や地域の学校(現地校)の中には、いわゆる通知表(成績証明できる書類)の内容を説明する必要があります。成績証明書の箇所に「日本語訳の添付」、「説明の添付」が求められるケースです。「誰が」作成するのか、と疑問に思うことは大切です。疑問を解消するために、誰に質問をするのか。返答までの時間を見積もって準備をしましょう。
3.「理由書」などの提出書類の記述について
志望動機、自己アピールなどの提出フォームも学校によりさまざまです。A4一枚白紙のフォーマットもあれば、罫線の引かれた指定用紙がある場合もあります。いずれにしても帰国生として、書類に書く自分らしい「個性、経験、視点」は何か。長期のスパンで考え、準備が必要となってきます。そのためには言語知識の整理と習得、手書きの練習が必要です。
帰国後のお子さまに最適な教育環境を見つけるために
「帰国生受験を親子で乗り切る!保護者に求められる6つのサポート」のセミナーより、前半の「学校選び、願書作成編」をお伝えいたしました。帰国後の学校生活は、お子さまだけでなく保護者も不安なことがたくさんあります。その不安を解消できるよう、どのような視点で学校選びをすればよいのかをお話いただきました。また、志望校に向けての願書作成のコツについては、余裕のある準備がカギを握ることをお伝えいただきました。次回は後編の受験対策についてのセミナーレポートをお届けいたします。
お悩みなら1度ご相談を
オンライン進学塾Kyoshin@Homeは、これまで30カ国以上の国と地域にいる数多くの帰国子女をサポートしてきました。なにより、オーダーメイド個別指導と定期的なカウンセリングによって、授業だけでなく、精神面にも配慮している点が喜ばしいことです。海外在住が長い、または短い際の受験、逆に急な赴任への不安など、それぞれの悩みが帰国生のご家庭にはあるはずです。まずは気軽に相談してみませんか?
登壇者:株式会社 京進 第一運営本部 海外ブロック長 古川泰史
2004年1月より帰国子女指導をスタートした帰国子女指導のエキスパート。海外の校舎責任者を歴任して、2020 年 9 月に帰国。現在は海外拠点(ドイツ・アメリカ・中国)とオンライン校(日本)の統括をしている。帰国子女専門のコーディネータとして、国内外の生徒・保護者に向けての情報発信や教育相談を行っている。帰国子女とその家族が「笑顔」で生活できるように、援助を心がけています。
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