2月セミナーレポート ゼロから学ぶ帰国生中学受験
「ゼロから学ぶ帰国生中学受験」セミナーレポート!帰国生受験のプロ、ena国際部東京校校長 永田久貴氏にご登壇いただき、帰国生中学受験についてお話いただきました。今回はそのセミナーでお話いただいた内容をお届けします。
帰国生受験の年間スケジュール
◆塾通いを始める時期
受験月が2月であることから、塾の新年度は一般的に2月から開始となります。受験のカリキュラムや、するべき学習量を考えると、塾でいう小4の2月(日本の学校で言う小3の3学期)がふさわしいと考えられます。
◆年間スケジュール
(例)*enaの場合
2月〜3月 通常授業 | 春期講習 | 4月〜7月 通常授業 | 夏期講習 | 9月〜12月 通常授業 | 冬期講習 | 直前講習 (6年のみ) | 受験 (4、5年生は進級) |
一般的に受験は「夏が勝負」と言われていますが、帰国生入試は通常の2カ月前倒しで始まるため、「夏前が勝負」となります。並行して、この時期は保護者や塾の講師は情報収集、志望校選び、学校見学の時期でもあります。最終的には成績などを見ながら志望校を選んでいき、願書の入手、何をどう書くかを考えるようになるのが一般的な流れです。
◆志望校絞り込みの時期
受験予定校としての志望校となると、小学6年生前半でもあまり確定していない感覚です。おおよそ夏休みくらいに固まり、受験校や受験日程パターンで決まっていく印象です。
受験はいつ頃から考え始めるべき?小5、小6からでは遅い?
受験のためにするべき学習量を考えると小5、小6からでは少し遅いです。しかし、それまでに身についている学習習慣や基礎学力、読書量によっても変わってきます。また、これまでに勉強以外の何かを頑張ってきた経験があると受験勉強を乗り越える力や継続する力(精神面、体力、いわゆるポテンシャル)が備わっているかも左右します。
これらを考えると、小学5年生の前半であればギリギリ間に合います。小学6年生であれば、本人の強い意志や親のサポートや覚悟、情報の絞り込みなどあらゆる戦略が必要となります。
幼少期や低学年からやっておくべきことは?
小学校低学年の学習自体は、ご家庭でも教えられると思いますが、それよりは学習に興味を持つようにサポートしたり、一緒に学べる環境作りをすることが最優先だと思っています。
▪読書、語彙力を身につける:話をさせる、最後まで話を聞く ▪机に向かう習慣 ▪環境:例えば、地球儀や図鑑、辞書など勉強する環境が日常生活に溶け込んでいる環境 ▪親と一緒に調べ、子どもが問いかける習慣 ▪好きな習い事をやってみる、続ける |
帰国生受験に求められる学習時間の考え方
◆〜小3&受験しない場合
〜小3&受験しない場合の学習時間は「学年×15分」が目安です。
<目安> 1年生:15分 2年生:30分 3年生:45分 |
◆受験生の場合(小4以上)
勉強時間より、1週間のスケジュールが重要となります。「何曜日に塾があるから、何曜日にはどの宿題をするか」プラス「習い事」のスケジュールを考え、「どの日に何をやるか」が大切です。その際、重要となるのが親主体ではなく、子ども主体で計画をたてることです。いびつな計画となっていても親が修正をかけていけることが理想です。
◆卒業生の学習時間は?
ena国際部の卒業生に聞いたところ、小学6年生の後半は「ずっと勉強をしていた」、「必要なだけ勉強していました」とのことです。ただし、小学6年生の前半は「6時間やろうと思ったけど3時間でした」、「塾の授業時間を含めないで3時間です」という回答も多かったです。
帰国生の学校選びのポイント
◆帰国生受け入れ校が帰国子女に期待することは?
●語学力・英語力
帰国生受け入れ校が期待していることは語学力です。それだけではなく、面接や作文で問われることも求められます。
<面接&作文で問われること> ▪国際感覚や経験 ▪困難を乗り越える力と経験 ▪複眼的視野:日本、海外と双方の視野を持っている |
◆帰国生受け入れ校の方がなじみやすい?
●一般入試(若干名):募集要項にこのような書き方をしている学校は入学後に帰国生の取り出し授業などはなく、一般の学生と同条件で学校生活を送る学校が大半です。
●帰国生入試:帰国生入試を設けているところは、帰国生も在籍し、帰国生にも慣れている学校です。
<例> ・英語の取り出し授業:英語のレベル別授業を行っている ・国際学級:帰国生のみの学級がある ・All English授業:英語で授業を受けられる科目が多い |
家庭や子どものニーズに合わせて選ぶのが良いと思います。ただ、100%その学校が子どもに合うことはないので学校に合わせる力というのも必要です。帰国生であれば、その力は必ず持ち合わせていると思います。
帰国生入試合格後、学業についていける?
「入学時にはついていけません」とはっきりと言う学校もあります。ただし、その学校に合格している以上は、学校の勉強についていける力があるはずです。入学時ではなく中学1年、2年の学年末の成績を見るようにしましょう。学校での勉強を継続すれば、成績は向上します。
入試について
◆平均受験校数は?
日程がバラバラなため併願校を増やすことも、減らすこともできます。大体平均すると6校程度です。複数回試験日程がある学校もあり、それも含めて皆さん6校程度受験されます。
◆帰国子女枠の条件は?
<東京都の場合(一般例)>
▪海外滞在年数:1年以内
▪帰国後:3年以内(基本的には受験日で3年以内)
*学校によって異なり、「相談してください」という学校も多いため、詳細は学校HPなどでご確認ください。
◆帰国生受験の面接対策
面接は得意な子と不得意な子がいます。ena国際部では、小学校6年生の始めから面接対策を行うようにしています。面接対策としては日常性を磨き、さらに学習面も補うことが必要です。
●日常性
・体験:さまざまな体験をしている
・会話:普段から習い事の先生、コーチ、学校や塾の先生との会話のキャッチボールができているか
・姿勢:姿勢が良いか
●学習面
国語が得意なのか、読書量があるか、新聞やニュースを見る力が備わっているか。これらが備わっているかで話す内容や会話の「大人度」が変わります。
◆親子面接のチェック項目
基本的に下記3つの項目に答えられるようにしておきましょう。
1.志望理由
2.志望する学校の教育方針にどう賛同するか
3.海外生活でどのように子どもと関わってきたか
非英語圏、日本人学校に通う場合は帰国子女受験のメリットがない?
帰国生入試を受験する資格がある以上は、帰国生入試を受けることができるので、入試制度をどのように組み合わせて利用していくか、戦略を練ることが必要です。決してメリットがないわけではなく、帰国生入試の使い方が変わってくることになります。
(例) ▪国語、算数、理科、社会の4科目入試を視野に入れる ▪国語、算数2科目で勝負する ▪英検2級程度を保持しているのであれば、加点や優遇措置のある学校を視野に入れる ▪国語、算数などの受験対策が間に合わないようであれば面接、作文、書類選考の入試も組み合わせる |
帰国生枠の受験と一般受験の難易度の違い
帰国生枠は日程が前倒しのため、その分だけ易しく作られているのは間違いありません。ただ、範囲については帰国生入試も一般入試も同じなので、簡単に合格できるかというとそういう訳でもありません。また、帰国生入試だと科目を絞れる場合もありますが、科目を絞るとその分選択肢が狭まるので夏が終わる頃までは絞らず、3教科の対策をしていくのが良いと思います。
子どもの受験においてご家庭でサポートできること
●計画・点検・声かけ・教える
小学6年生で主体的に受験勉強をできる子どもは数パーセントです。なかなか自分で勉強するのは大変なので、ぜひ応援してあげてほしいと思います。計画を一緒に立てて、点検や声かけもお願いしたいです。もし子どもが嫌がらずに勉強を教えられるのであれば、テキストに沿って教えるのも良いと思います。
●解答の管理
受験期のストレスや褒めてもらいたいために、解答を写す子どもが出てきます。できれば、解答冊子は親が管理したほうが良いと思います。
●極端な関わりや中途半端な関わりを避ける
計画などを厳格に管理することや普段は勉強に関わっていないのにテストの結果にだけ辛辣な言葉を言うこと、中途半端な関わりは避けてほしいです。子どもの気持ちに寄り添って、継続的に関わってほしいと思います。
●役割分担
すべてを親の一人が抱えてしまうのは大変なので、家庭内での役割分担を決めると良いと思います。細かなことを言うのはお母さん、「どん!」と構えるのはお父さん。国語はお父さん、算数はお母さん、のように分けると良いですね。
●親子バトルを減らす
これが、一番大変なことだと思います。命令形や主体性を欠く言葉を避けて、勉強するように導けると良いですね。一緒に勉強する、分からないふりをして子どもに教えてもらうことも良い方法です。子どもが一番応援してほしいのはお父さん、お母さんです。親に「もう受験やめなさい、塾やめなさい」と言われるのは傷つくことなので、バトルを減らすように心掛けましょう。
入塾のタイミング・塾選びのポイントは?
下記が塾選びのポイントとなる項目です。せっかく塾に通うので、しっかりと塾を活用するようにしましょう。塾の勉強をせずに違うことをしたり、塾にすべてを任せてしまうのも良くありません。塾の勉強とカリキュラムを使いながら、家庭でも学習を一緒に進めていく姿勢で臨みましょう。
●タイミング
小4の2月(塾の学年で)
●個別か集団か
スタートが小4の2月であれば集団塾が良いと思います。個別塾も使い方にもよりますが、受験のペースよりも個人のペースになってしまう恐れがあります。受験のペースに合わせられる子どもは良いと思います。
●質問ができる
「塾に行ったらおしまい」ではなく、分からないところは質問できる塾が良いです。
●情報と経験
勉強面については問題なく解決できるけれども、帰国入試についての情報や経験がない塾も中にはあります。帰国入試についての経験や情報を持っている塾が良いでしょう。
●自習室について
自習室が落ち着いて勉強できる状況か、見回りがされており荒れていないか、など確認しましょう。
●レスポンス
聞きたいこと、細かいこと、また、電話するまでもなくメールで聞いたことに対してレスポンスが素早く返ってくる塾が良いですね。
帰国生中学受験を始める前に知っておくべきこと
帰国時に高学年に差し掛かるお子さんをお持ちのご家庭なら必ず気になる「帰国生中学受験」。今回はその始め方やスケジュール、知っておくべきポイントや親の心構えなどをお話いただきました。セミナーの後半では視聴者の皆様より「理数系に進む際に必要な算数力」、「受験塾が近くにない」、「勉強のモチベーションについて」や、「4教科+英語受験はできるのか?」、「英語試験の際の英語力の指標」、「編入試験の戦略」など具体的なご質問を多数いただき、有意義な解説を聞くことができました。
登壇者のご紹介
仙台で4年間塾教師として下積みをする。2004年~2009年にenaロンドンで教鞭を執り、フィンチリー教室の教室長を務める。また、世界中の帰国生が集まる直前講習会のレギュラー講師や国際部渋谷校勤務の経歴ももつ。その後はena東大和の校長として都立中高入試をメインに尽力し、2017年度中高入試部門で学院長賞をW受賞する。直後に、満を持して帰国入試の世界に復帰する。復帰後は、毎年保護者面談を200件以上実施している。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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