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【連載第1回 Aレベルとは?】Aレベルはどんなカリキュラム?IBとの違いは?Aレベルの基本を徹底解説

磯崎みどりです。今回からAレベルについての連載がお題となったことから、Aレベルの基礎から始めたいと思います。

1.Aレベルってなに?

そもそも、Aレベルとはどのようなカリキュラムなのでしょうか。最初はここから始めたいと思います。

Wikipediaによると、「一般教育修了上級レベル(General Certificate of Education Advanced Level)、GCE上級レベル、通称Aレベル(A-Levels)は、イギリスとその連邦諸国において、中等教育卒業もしくは大学入学レベルにあることを示す学業修了認定である。」とあります。Aレベルは英国ケンブリッジ大学傘下の教育機関であるCambridge Internationalが提供している国際資格で、大学教育を受ける前の16~19歳の学生を対象に提供している高校卒業資格及び大学入学資格です。

シンガポールはもちろん、日本でも最近では国際バカロレア(IB)を提供する高校も増えてきていて、ことあるごとにIBが取り上げられていますが、実は、世界で最も普及している教育プログラムCambridge Internationalの教育プログラムであるAレベルは、イギリスを中心に約160カ国10,000校の学校で認可され、毎年17万人の学生が受講しています。つまり、世界中の多くの学生がAレベルを履修しているのです。

大学進学に必要な科目数は最低3つの科目で、Aレベルの科目評価は6段階です。試験を受けて科目ごとに、A*(90%以上)、A(80%)、B(70%)、C(60%)、D(50%)、E(40%)の6段階に評価されます。

2.Tanglin Trust SchoolにおけるAレベル

Aレベルのカリキュラムを提供するシンガポールのインター校と言えば、Tanglin Trust Schoolです。Tanglin Trust Schoolは、シンガポールで唯一の国際バカロレア(IB)とAレベルの両者を提供する学校です。私はこの学校で日本語を指導しています。まずはTanglin Trust Schoolに、Aレベルについて詳しく説明してもらいました。以下、Tanglin Trust Schoolからの報告です。

Tanglin Trust Schoolからの報告

アカデミック面について

Aレベルでは、3つまたは4つの教科に焦点を当て、2年間かけて深く学びます。必修科目はありません。一般的にAレベルと呼ばれているカリキュラムは英国Aレベルと国際Aレベルがあり、Tanglin Trust Schoolでは英国Aレベルまたは国際Aレベルの両者併せて、25以上の科目から選択することができます。ほとんどの学生は3科目を履修することになりますが、学業成績が優秀な学生は4科目を選択することもできます。2024年現在、Tanglin Trust Schoolでは以下の科目が選択可能です。

国際Aレベル(インターナショナルAレベル)の科目
生物学、化学、物理学、数学、高等数学(Further Moth)、コンピューターサイエンス、経済学、地理学、歴史、心理学、演劇
英国Aレベル>
英語言語と文学、英文学、メディア研究、ビジネス、政治学、芸術・工芸・デザイン、デザインと技術、音楽、体育、フランス語、スペイン語、追加言語(日本語、中国語などの追加言語は、少人数クラスで追加科目として学ぶことができます。)

国際Aレベルを履修する場合、生徒は12年生(Y12、G11)でAS試験を受験し、その点数をAレベル全科目に繰り越すことができるため、最終学年の試験へのプレッシャーが軽減される利点があります。1年間に2回の試験期間(5月/6月と10月/11月)があるため、必要に応じてAS試験を再受験することもできます。

英国Aレベルの学生は、モジュール式の試験を受けるのではなく、コース全部を終える2年間の学習の最後に試験を受けます。

AレベルはA~Eのアルファベットで評価され、A*が最上位です。大学に出願する場合、Aレベルの成績はポイントに換算されます。例えば、英国の各大学コースは一定のUCASポイントを必要とします。2017年にGCE A -Levelsに導入された変更に伴い、どの科目も20%以上のコースワークが課されるようになりました。最終結果は、試験の点数のみで評価されます。

ここまでがアカデミックの面についてのTanglin Trust Schoolからの報告です。私が指導する日本語については、次回以降で詳細を書きたいと思います。

引き続き、アカデミック以外の面についてのTanglin Trust Schoolからの報告です。

アカデミック以外の面について

Aレベルの科目選択に加え、生徒は「タングリンコア」を履修します。これはプロジェクト(Extended Project)、創造性、活動、奉仕活動(CAS)プログラムで構成されており、生徒はアカデミックなカリキュラムを超えた新しいスキルを探求し開発することができます。また、学習スキル、大学出願、大学生活、健康、財政、人間関係などをテーマにしたゲスト講演者によるさまざまな講演を含む、体系化されたライフスキル・プログラムも用意されています。自学時間には、図書館でリサーチスキルを磨くことが期待されています。

CASについて

CASは、Creativity(創造性)、Activity(活動)、Service(奉仕活動)の頭文字です。

創造性:創造的思考、実験、表現を伴う経験
活動:健康的なライフスタイルに貢献し、個人的な挑戦を伴う身体的な運動
奉仕活動:関係者全員の権利、尊厳、自主性を維持しつつ、学習効果をもたらす無報酬のボランティア活動

必要条件

CASはY12とY13のカリキュラムの中核をなすものであり、CASで成功するためには、18カ月間にわたって毎週参加していることを証明する必要があります。この証拠は、ブログ、日記、写真、ビデオ日記など、さまざまな媒体を通して批判的に振り返るという形で示すポートフォリオとなります。この記録された情報は、1年半の活動終了時に書くCAS体験学習の最終振り返りに使用される重要な証拠となります。

CASとエジンバラ公賞

タングリンでは、多くの学生がゴールド・エジンバラ公賞の取得を目指しています。CASの多くの活動は、同時にゴールド・エジンバラ公賞の一部としても認定されることがあります。

プロジェクトについて

Aレベルを選択する生徒はAレベルの最後にはExtended Projectと呼ばれるプロジェクトに取り組みます。これは5000文字のエッセイか何らかの作品とそれに関するレポートを作成するリサーチプログラムです。プロジェクトの終わりには、作成した進捗履歴とともに20分から30分のプレゼンテーションを行います。

プロジェクトの目的は、リサーチ、プランニング、分析、評価といった本質的な分野で学生の能力を伸ばすことです。生徒はY12の1学期にプロジェクトに着手し、Y13の1学期末までに完成させます。生徒はどのような議題を選んでプロジェクトを作成することができますが、Aレベルの学習内容または将来の大学進学に関連したものを作成することを強くすすめています。

3.AレベルかIBか

「2.Tanglin Trust SchoolにおけるAレベル」で示したように、Tanglin Trust Schoolでは、AレベルとIBのどちらかを選択することになります。そのどちらを選択するかは、生徒の資質や成績をもとに教科担任と相談しながら決めることになるため、ここでどんな生徒がIBでどんな生徒がAレベルかということは明確に書くことはできませんが、この2種類のカリキュラムの最も大きな違いは科目数でしょう。Tanglin Trust SchoolではAレベルは科目数が決められておらず、最低3科目選択を守ればよいのに比べ、IBは最低6科目という点で違っています。

この違いをよく検討した上で、カリキュラムを選択されるといいと思います。ちなみに、Aレベルでは科目数が少ないから大学受験できない国があるということはありません。そこは、日本の私学では3科目受験だけれど、国立では5科目といったような科目数の違いにはなっていません。上記のTanglin Trust Schoolの生徒が合格している大学群のリストをアップロードしておきます。

まとめ

上記でAレベルの基礎、Tanglin Trust Schoolのカリキュラム詳細をお知らせしました。次回は私が指導している、Aレベルの日本語について書きたいと思います。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。さまざまな環境の子どもたちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校はさまざまなコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご連絡ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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