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【〜連載〜海外生とIBプログラム】 第1回IBプログラムとは?IBDPで大切な2つのスキル

こんにちは。IB日本文学指導者であり、日本語文化継承学校校長の磯崎みどりです。
シンガポールでは学校案内を見る時、「IB(インターナショナルバカロレアの略)」という文字を見ない日はないのではないでしょうか。それほどシンガポールのインター校に浸透しているIBプログラムとはどういうものなのでしょうか。

私自身がかつてIB生であった娘の母親である経験も含め、何度かに分けてIBプログラムとはどんなものなのか、我が子には合うプログラムなのか、他の「大学受験資格」となるプログラムとはどう違うのか、なぜIBプログラムはそんなに広まっているのか、など、考えられる限りのQuestionにAnswerとなるよう書いていきたいと思います。

第一回目の今回は、IBプログラム拡大の現状、IBDPが向いている生徒とはどういう生徒なのか、ということについて書いていきたいと思います。

IBプログラムとはどういったものなのか

プログラム詳細を知るには、以下のサイトが教育理念から科目についてまで、すべて丁寧な説明を日本語で書いているサイトなのでアップロードしておきます。
DP(ディプロマ・プログラム) | 文部科学省IB教育推進コンソーシアム

なぜ文科省が上記のような丁寧な説明を書いているのでしょうか。その理由は、日本で2013年5月に一部の科目を日本で行う「日本語と英語によるデュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)」の共同開発に合意したことが出発点となり、日本語と英語でIBDPを取得できるようになったことです。

IBDP30科目のうち、「日本語(文学、言語と文学)」「歴史」・「経済」・「化学」・「生物」・「数学(標準レベルと高度レベル)」と「物理」の7科目が日本語で実施されています。

また、科目以外に修了しなければならない3つ、TOK(Theory of Knowledge:知の理論、物事の考え方の論理を学ぶ授業)、EE(Extended Essay:高校卒業論文)、CAS(課外活動)も日本語で習得できます。

つまり、グループ2の外国語、6の芸術は日本語での選択は不可ですが、グループ1,3,4,5で日本語での選択が可能な科目を選べば、全体の2/3は日本語で学ぶことができるようになっている仕組みです。
※この仕組みは、すべての科目を英語でIBDPを取得するのが難しいと考える生徒にとっては朗報ですが、注意点として、進学先によっては英語でそれらの科目を受験していなければ科目として認められない場合があるので、よく志望大学の求める科目を調べてから日本語IBDPを選択する必要があります。

こういった流れを受けて、日本ではインター、一条校(日本の一般の学校のこと。日本の学校教育法(昭和22年法律第26号)の第1条に掲げられている教育施設の種類およびその教育施設の通称)を問わずIB校が増えました。

IBはその理念のすばらしさに加え、ボランティアや課外活動までもを組み込んだプログラムであることから、生徒の人格的成長を目指す理想のプログラムと言えるでしょう。

近日知ったことですが、日本のBritish Schoolまでもが、IBDPプログラムを導入することを決定したということで、いかにIBDP人気が日本で高まっているのかを感じた次第です。

というのも、英国の全国統一試験制度であるGCSE(General Certificate of Secondary Education)に続くSix Formと呼ばれる高等教育は、A Level(正式名は、GCE-Aレベル(General Certificate of Education, Advanced Level))と呼ばれる2年間のカリキュラムで、英国系の学校ではこのA Levelを導入しているところも多く、実際日本のBritish SchoolはこれまでA Levelを導入していたところをIBDPに変更するということで、その変化が保護者の話題の中心ということでした。

国策として多言語政策を採用しているシンガポールにおいては、IBの理念に加え、外国語が必須科目となっていることも、多くの学校が採用するプログラムとなっている理由でしょう。

もう5年ほど前になりますが、シンガポール課程IBプログラムの理念があまり浸透していないインドネシアで、IBプログラムの詳細について講演するよう頼まれお話をした際に、日本側でのIBの受け皿がないということで、日本に帰国することが決まっている方々からIBプログラムで学習させることに対する不安があるという保護者の声を聞いたことがあります。

現在では上記のように、日本側の受け皿が広がっていることから、ますますIBのすそ野は広がっていく予感がある一方、ブームだからと言って何が何でもIB校で学習することを選択するというのではなく、このプログラムが果たして我が子に向いているプログラムなのかどうかをよく検討してみることは大切なのではないかと考えます。

小・中学生の学習プログラムPYP(Primary Years Programme)、MYP(Middle Years Programme)は公式のテストなしに進められることから、特に抵抗を感じることはないことないでしょう。

しかし、DP(IB Diploma Programme)は高校最後の二年のプログラムであり、最後に公式テストがあることから、このIBDPのプログラムがどんなものなのかを知ることが一番大切です。

そこで次に、まずはIBDPがどういった生徒が高得点を取得するのに向いているのかについて書いてみたいと思います。

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どんな生徒がIBDPで高得点を狙えるのか

➀IBDPを制するのは、自己管理能力の高い生徒

まず最初に言えることは、DPが合う生徒とは、自分の学習スケジュールをきちんと管理できる生徒です。

IBDPは、プログラムの詳細から分かる通り科目数が多く、その上、どんなに課題で忙しくしている時でも、ボランティアや課題活動が必須であるため、一番大切なのはTime management、つまり効率よく自分なりのスケジュールを立ててうまく学習していく力です。

これは、別にDPでなくても、高校生であればどのプログラムで学習していても自分のスケジュール管理ができることは重要ですが、IBDPは6科目選択が必須の上に、それぞれの科目が複数の公式テストを課し、内部評価のための提出物も多いため、常に自分が取り組まなければならない課題が何なのかが分かっていることが一番重要です。

②IBDPで重要なことは、文章で説明できる生徒

授業の内容に関しては、科目ごとに重要ポイントは違いますが、共通して言えることは、学習した内容すべてを文章で説明できる力が重要であるということです。

「分かっているのだけれども、どう説明したらいいのか分からない」では「分かっている」ことにならないプログラムと言えるでしょう。

ですから、答えを選択肢から選ぶテストで高得点が取れるからと言って、IBDPでは高得点を狙えるとは言えません。いわゆる理系の科目で、数字が中心となる科目であっても、その内容を文章で説明できることは大変重要です。

イメージして頂ければよいのは、たとえ、TOEICで高得点を取れるからと言って、英語で説明することがうまくできるとは限らないということ、と書けば分かっていただけるのではないでしょうか。

そんなの当然、と思われることかもしれませんが、高校生にとってすべての事象を丁寧に説明することはかなり難しいことなのです。

クイズ形式でいろんな知識を頭に詰め込み、単語で答えられることも重要ですが、それをすべて自分の言葉で理由や原因などまで説明できるかと言われたら、どんなに大変なことかがお分かり頂けるでしょう。

したがって、文章力のある生徒はIBDP選択に向いていると言えます。

まとめ

上記のようなことは、高校生としてできるようになってほしいと保護者ならだれでもが願うことでしょうし、実際、多くの生徒が、簡単ではなくとも、苦労しながらでもできるようになる生徒がほとんどどだと言えます。ただ、他の学習プログラムでなら、もっと自分の持つ力を発揮できるはずだ、という生徒がいるのも間違いありません。

次回は、IBDP以外の学習プログラムについてもお伝えし、さらにIBDPがどんな生徒に向いているのかについて書いていきたいと思います。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。

様々な環境の子供たちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校は様々なコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご連絡ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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