HOMEお役立ち記事【〜連載〜帰国前にできること】第一回海外帰国前の学習準備は重要!子どもに帰国前に取り組んでほしい学習内容をご紹介

【〜連載〜帰国前にできること】第一回海外帰国前の学習準備は重要!子どもに帰国前に取り組んでほしい学習内容をご紹介

こんにちは。わが子を完全なバイリンガル、マルチリンガルに(インターナショナルバカロレアディプローマ(以下IBDP)、バイリンガルディプローマ取得の上で、IBDP満点でUWCSEAを卒業)育て上げた母であり、IBDP日本語教師である磯崎みどりです。現時点でシンガポールでIBDPを指導される方々の中には、ご自分のお子さんを完全なバイリンガルに育て上げ、日本語と英語のバイリンガルディプローマを取得させている方は、私以外にはいらっしゃいません。是非、日本語教師であってもわが子をバイリンガルにするのは難しいことから、少しでも皆さんへのアドバイスになればと思い、今回の執筆をお受けしました。

初回は、バイリンガルを意識しながら、帰国に備える心構えについて書いてみたいと思います。「帰国」と言われてから考えないといけないことの一つに、お子さんの今後の学校決定が挙げられます。受験を含めて対応しなければならないこともあり、事前準備が必要ですが、どんなことを準備しておくべきなのでしょうか。

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海外赴任の変化 なぜ今急な帰国?

日本企業が「海外要員」をどんどん増やし始めてから、さて、もう何年になるでしょうか。私自身そういった「海外要員」の方々と一緒に仕事をしていた時期があるため、もうん十年が経つのだと感じ入ります。ご承知の方も多いと思いますが、その発端は1985年の「プラザ合意」による急速な円高で、日本企業の海外進出が進んだことが最大の要因ですが、本格的なグローバル化が進んでいたところに、ここ数年はコロナの影響から「海外要員」の皆さんの赴任の仕方も変化してきたように思います。

「海外赴任」と言えば、初期のころは「海外から日本」そして、「日本から海外」と必ず日本を挟んでの赴任でしたが、最近では「海外要員」と呼ばれる方々は、一旦海外に出られてしまったらさまざまな国を渡り歩くことになる赴任をされることが大変多くなっていました。外務省領事局政策課が発表した海外在留邦人数調査統計によると、2017年10月の時点で、海外進出している日系企業数は2005年以来過去最高を記録していたそうです。2008年のリーマンショックを乗り越えて目覚ましい発展を続けていただけに、一旦海外赴任が決まったら、このまま家族はずっと海外生活だろうと思われていたご家庭も多かったのではないでしょうか。

それが、このコロナ禍によって一変しました。特に シンガポールでは、同国内での外国人労働者を減らすため就労ビザの規定を厳格化し、シンガポール人を優先して雇用する働きかけが行われました。皆さんの周りにも急に日本への本帰国が決まられた方も多く見られたことでしょう。

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本帰国が決まった さあ学校をどうする?

急な本帰国が決まった時、みなさんはお子さんの学校のために何をすべきだと考えますか。あまりに急な場合、お子さんが小中学生の場合は、まずは新しい居住地域の公立学校への編入となるのでしょう。しかし、少しでも事前にどんなことをしておけばよいかが分かっていれば、急な帰国でも慌てずに学校選び、受験などの手続きを行うことができるのではないでしょうか。いつかそういう日が来るかもしれないとお子さんの海外での学習先として日本人学校を選択されている方も多いと思います。一方、昨今、せっかく海外に出たのだから、という思いや、実際長期海外滞在を予想していたことから国際校や現地校で学ぶ日本人のご家庭は劇的に増えていました。

ここでは、日本に本帰国になるかもという場合を、お子さんが日本人学校に通うケースと、国際校に通うケースに分け、学校情報収集以外に事前に考え備えておくとよいであろうことを書いていきます。

日本人学校のお子さんの場合

そもそも日本人学校にお子さんを通わせていらっしゃるご家庭の場合は、海外赴任が決まった時からいつか日本に本帰国するのだから日本語で学習させておこう、という意図をもって学校選択をされたことと思います。日本に本帰国してからも、学習には何の遅れもなく一安心。

でも、一つだけ心配があります。「海外から戻ってきたのだから、英語はペラペラでしょ?」というご近所や親戚の言葉です。気にされないならそれでよし。シンガポール日本人学校や、早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校は英語学習にも力を入れていて、日本に戻って日本の学校で英語学習を続けるぐらいであれば、何の問題もないでしょう。それどころか、私自身も日本人中学校の英会話の授業や早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校の英語授業を担当していたことがありますが、英語力はさまざまではありましたが、英語で話すことに抵抗がない生徒もたくさんいました。

ただ、「バイリンガル」の理想と思われる読み書き共に日本語と英語が同じレベルで身に付いているかというと、なかなかそうではない生徒がほとんどでした。せっかく、という言葉が正しいかどうかは別として、海外に居住していた経験がある以上、英語ぐらいはできるようになっているだろう、なっていてほしい、という期待に応えられるぐらいの英語力を身につけられるといいだろうと思います。これが帰国以前に取り組んでおくといいことの一つですが、そんなのは分かっている、だから英語学校にも行かせているのに、塾にも行かせているのに、なかなか英語が伸びない、という声も聞こえてきそうです。理想とするバイリンガルについては、別の機会で述べたいと思います。

現地校や国際校のお子さんの場合

こちらのケースの方が増えていることを先にも書きましたが、こちらの方にも実は課題があるんです。

「子どもは英語も話せるようになるし、世界中から来た子ども達と友達になれるし、いいことしかないんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、そういう道をとることに落とし穴があることは忘れてはならず、そういった落とし穴を理解した上で現地校やインター校を選択することが必要だということなのです。

世界を見回すと、日本人学校が日本人家庭の選択しがちな居住地域とアクセスが良い状態で整備されている国はあまり多くありません。その点で、シンガポールは大変恵まれた環境にあると言えます。日本人学校を含む国際校と現地校(場合によっては、選択できないことはありますが)と選択肢が多いからです。

では、何が落とし穴なのでしょうか。日本に本帰国になった時に、日本語が十分でなくなっていることを心配される保護者は多いと思います。日本語、つまり、「国語」は学ばせておかねばという思いでお子さんに日本語を学習させていらっしゃるご家庭は多いものと思います。(併せて、算数も塾で学習させるご家庭が多いですね)私自身が、いつか本帰国することになった時に困らないように、という思いから、娘が小学生の頃に日本語学習を継続させたのは、以前指導していた補習校の生徒のご家庭の皆さんと同じ思いでした。(我が家については、その後、在星期間が長くなり、本帰国をすることはないだろうと決めた時点から、今度は帰国を目標とする日本語学習ではなく、現在の日本語文化継承学校中高生コースの着想となる、IGCSEやIBを目指す日本語学習に切り替わることになりますが、この件についても、また別の機会に書きたいと思います)

理科や社会といった科目の学習を日本語では行ってこなかったことから、日本での授業についていくのが大変だったという声は、本帰国した元生徒から聞いていました。ほとんどの生徒さんの場合、日本語に多少の弱さ(漢字を覚えていない、語彙が少ないなど)はあれ、小学生の間であればそれほど問題はないのですが、中学生以上の場合には、たとえ同じ概念を英語で学んでいても、日本語で何と言うのかを知らなければ、理科や社会で苦労することがあるということでした。したがって、在星期間であっても、帰国を意識されるのであれば、日本語ですべての科目を学習しておくことは大変重要ですね。

さあ、ここまで書いたところで、「そんなことを言っても、毎日の学習内容をこなすだけでも大変なのに、日本語ですべての科目の学習を行うなんて」という声が聞こえてきそうです。そんなのは無理だと考えられる方がほとんどだと思います。そうなんです。英語も、日本語も、と親が我が子によかれと思って学習させようとすることは、決して本当に子ども達のためになることなのかどうかは、不明であり、負担になる場合も多々あると思います。英語学校に通わせるつもりの思いで子どもを現地校や国際校に通学させると、子ども達は楽しんで通うかもしれませんが、保護者は上記のような問題も起こりうるのだということをよくよく頭の片隅においていてください。

日本の学校を帰国受験するにあたっての共通事項

帰国受験をするに当たり、在星期間中にどの学校を選んでいたかにかかわらず、帰国受験をすることになるなら、是非準備しておいていただきたい共通事項が一つあります。それは、在星期間中の様々な活動を記録しておくことです。

お子さん自身に日記をつけるように習慣づけておくことは大変役に立ちます。もしそれができていなくても、お子さんが小学生の場合は、保護者がその時々の記録を残しておくことはあとで意味を持つものとなります。何か出来事があるごとに、その時の気持ちをつづっておくようにすると、帰国受験の際に課されることが多いインタビューや作文を書く時に役立てることができます。こういったテストでは、「海外で過ごしてきたことをどのように日本の学校に持ち帰ることができる生徒なのか」ということを学校側が確認するために行うわけですから、ただ漫然と生活してきたということがないように、日本国外にいるからこそ研ぎ澄まされた感覚を伝えられるようにしておくべきです。どんな小さなことでもいいと思います。

例えば、家族でセントーサに出かけ、海で遊んだとしましょう。セントーサの海の色を見て、日本の海の色と違う、と気づいたらそれを家族で話し合ってみる、そしてその色の違いがどうして起こるのかを調べてみる、となるとサイエンスですね。また、海に浮かんでいるごみを見つけてそのごみがどこから来たのかを考えてみるとなると、環境問題について考えることができますね。そういったようなことを自分の言葉で話せるということは、まさに海外に出ていた子どもだからこそ気づけることなので大変貴重なわけです。

「あなたは海外生活の中でどんなことを学びましたか」というような抽象的な質問に答えられるように日頃から生活の中での発見に目を向けそれを記録しておくことを強くお勧めします。

本帰国に備えるとは

「本帰国」の前に取り組んでおくとよいことについて少しだけ書いてみました。理科や社会、シンガポール滞在中の記録などは決して特別なことではありません。でも、私が指導した生徒の中で本帰国が決まった際に、これらについて「意識していなかった」という声も聞いたので、事前に考えておいて損はないと思います。

磯崎みどり氏ご紹介

磯崎みどり

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、現在アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究中。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、British School Manila (Philippines), Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンポールに永住する子供達を主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。

様々な環境の子供達にあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校は様々なコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子ども達を応援する学校です。
一緒にそういった子ども達を指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご一報ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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