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トビタテ!留学JAPAN攻略―帰国生の強みが光る留学計画書の書き方

「帰国生のミカタ」は、海外で暮らした経験、現地語や英語でのコミュニケーション力、複数の文化を行き来した視点は、トビタテ!留学JAPANの探究型留学で大きな力になると考えます。帰国生・海外経験者が「再訪」を「社会につながる探究」へ変える方法を編集部が解説します。

トビタテ!留学JAPANとは?

トビタテ!留学JAPANは、文部科学省と独立行政法人日本学生支援機構が進める、官民協働の留学促進キャンペーンです。2013年度に始まり、民間企業・団体・個人からの寄附を活用しながら、日本の若者が海外留学へ踏み出すために尽力されています。

2023年度から2027年度までは第2ステージとして実施されており、中心となる支援制度が「新・日本代表プログラム」です。高校生等対象では、将来「社会にイノベーションを起こすグローバル探究リーダー」となる人材を、大学生等対象では「自ら社会に変革を起こしていくグローバルリーダー」となる人材を育てることが掲げられています。

第2ステージ全体では、5年間で高校生等4,000人、大学生等1,000人、計5,000人以上への支援を目標とされています。

トビタテの特徴は、単に海外の学校へ通うことではなく、自分で立てた問いに基づいて、現地で探究・実践する留学を支援する点です。留学期間中には、現地での学修、フィールドワーク、インターンシップ、ボランティア、実験、実習、プロジェクトなどを組み合わせることができます。

また、このプログラムは学業成績や語学力に一律の応募要件はありません。もちろん留学計画を実現するために必要な言語力や準備は求められますが、「英検○級以上」「評定平均○以上」といった基準だけで落とすような制度ではありません。選考では、本人の人物面と留学計画が総合的に審査され、人物面がより重視されます。

帰国生・海外経験者にとっては、現地校での学び、多言語環境での生活、文化的な違和感、地域社会との関わりが、留学計画の出発点になります。ただし、「海外に住んでいる経験があるから有利」という制度ではありません。過去の経験を、自分の問い、現地での行動、帰国後の還元へどう結び付けるかが重要です。

◆返済不要の奨学金と給付額の特徴

新・日本代表プログラムで支給される奨学金などは給付型であり、原則として返済不要です。高校生等対象では、月額奨学金と留学準備金が支給されます。大学生等対象では、これに加えて、条件を満たす場合に授業料支援があります。

2026年度募集時の高校生等対象では、家計基準内の場合、北米・シンガポール・欧州・中近東などの地域で月額16万円、アジア、オセアニア、中南米、アフリカなどの地域で月額12万円が支給されました。家計基準外の場合の月額奨学金は6万円です。

留学準備金は、アジア地域が15万円、その他の地域が25万円を基本とし、円安や物価高騰への対応としてアジア地域に6万円、その他地域に10万円が加算されました。したがって、2026年度第11期では、留学準備金はアジア地域21万円、その他地域35万円でした。

大学生等対象の2026年度第18期でも、月額奨学金は家計基準内で月額12万円または16万円、家計基準外で月額6万円でした。留学準備金はアジア地域21万円、その他地域35万円です。さらに、諸外国等の大学・大学院などの高等教育機関で専門分野を学ぶ場合、最大30万円の授業料支援があります。

ただし、語学学校の授業料、語学習得のみを目的とする科目の授業料、受入大学で授業料が全額免除となる協定留学などは、授業料支援の対象外です。

ここで注意したいのは、奨学金等が留学費用をすべて補う「実費精算」ではないことです。支給額は地域、留学期間、家計基準などに応じた定額であり、航空券、ビザ申請費、保険料、現地住居費、食費、国内での面接・研修参加費などは別途必要になる場合があります。

留学費用は渡航先・期間・活動内容で大きく変わるため、採用を前提にせず、自己負担分も含めた資金計画を早めに立てましょう。

また、トビタテの良い面は資金面だけに限りません。事前研修・事後研修への参加は原則必須であり、留学目的や成果を深める機会になります。採用者は留学後も派遣留学生ネットワークの一員となり、継続的な学びや交流への参加が期待されています。

◆高校生等対象コースで選べる4つの探究

トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム【高校生等対象】(以下、高校生等対象と呼ぶ)」 高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部、高等専門学校第3学年以下、専修学校高等課程などに在籍する日本人生徒等が対象です。2026年度第11期の支援予定人数は合計700人でした。

高校生等対象では、主な活動内容に応じて、STEAM探究、スポーツ・芸術探究、マイ好奇心探究、社会課題探究の4コースから1つを選びます。複数コースへの併願はできないため、自分のテーマを最も適切に説明できるコースを選ぶ必要があります。

【STEAM探究コース】

こちらのコースは、科学、技術、工学、芸術、数学に関する問いを持つ人、AI、IoT、理科・数学的な考え方を活用して課題解決に取り組みたい人に向くコースです。2026年度の支援予定人数は160人でした。

たとえば、現地の再生可能エネルギー政策を調べる、ロボティクス教育を比較する、AIを用いた障害者支援を探究する、デジタルアートと地域文化の関係を調査する、といった計画が考えられます。

【スポーツ・芸術探究コース】

こちらのコースは、スポーツや芸術に関する問いを立て、その分野の発展や社会貢献につながる探究を行うコースです。実技経験や受賞歴、競技実績は必須ではありません。2026年度の支援予定人数は140人でした。

たとえば、地域スポーツクラブが多文化共生に果たす役割、障害者スポーツの参加環境、音楽教育と子どもの自己表現、伝統芸術の継承方法などを、現地での見学、参加、聞き取りを通じて探究できます。

【マイ好奇心探究コース】

こちらのコースは、「知りたい」「明らかにしたい」という自分の興味や疑問から出発するコースです。2026年度の支援予定人数は250人で、4コースの中では最も大きい枠でした。海外生活の中で抱いた小さな違和感を、探究の問いに変えられる帰国生と親和性の高いコースといえます。

たとえば、「なぜ現地の図書館は若者の居場所になっているのか」「多言語の案内は、どのように住民の参加を促しているのか」「地域の祭りは世代間交流にどんな役割を果たしているのか」といったテーマが考えられます。

【社会課題探究コース】

こちらのコースは、世界、日本、地域の課題を自分ごととして捉え、解決や活性化、社会貢献に結び付く探究を行うコースです。2026年度の支援予定人数は150人でした。気候変動、防災、多文化共生、教育格差、ジェンダー、地域福祉、認知症ケア、貧困、食料問題など、テーマは幅広く設定できます。

重要なのは「世界の貧困をなくす」といった大きな目標を掲げることではなく、自分が現地で観察し、聞き取り、協働し、検証できる問いに絞ることです。

◆大学生等対象コースで選べる3つの挑戦

トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム【大学生等対象】(以下、大学生等対象と呼ぶ)」 。大学、大学院、短期大学、高等専門学校第4学年以上と専攻科、高等学校等の専攻科、専門学校の専門課程などに在籍する学生が対象です。

応募年度の4月1日時点で30歳以下であることも要件の一つです。海外の大学・大学院への進学や、社会人としての留学は、この制度の対象にはなりません。

2026年度第18期では、イノベーターコース50人、STEAMコース100人、ダイバーシティコース100人、合計250人が支援予定とされました。

イノベーターコースは、自ら課題を設定し、新しい知識・技術・能力を獲得しながら、既存の枠組みを超えた価値を創造しようとする挑戦的な計画に適しています。いわゆる「ゼロをイチにする」構想を持つ学生向けのコースです。

たとえば、海外での生活経験から感じた子育て支援や教育情報の課題を解決するサービスを構想し、現地の社会起業家、利用者、行政機関への聞き取りを通じて試作・検証する、といった計画が考えられます。

STEAMコースは、日本・世界の社会課題の解決や新産業の創出に貢献するSTEAM領域の留学を対象にします。環境・エネルギー、ライフサイエンス、AI、情報通信、都市・社会基盤、材料、デジタルアート、デザインなどが想定されます。

理系分野に限定されず、技術と社会、芸術とデータ、人文社会科学とデジタル技術の接点を扱う計画も視野に入ります。

ダイバーシティコースは、専門領域における課題解決を目指す、幅広い分野の留学計画を対象とします。スポーツ、芸術、人文学、社会科学、教育、福祉、国際協力、総合知領域などが含まれます。

帰国生や海外経験者が、移民家庭の子どもの学習支援、地域の高齢者参加、多言語情報保障、ジェンダーと就労、文化遺産の継承、地域アーカイブの活用などを現地で探究する場合にも検討しやすいコースです。

募集要項から見る応募スケジュールと選考

トビタテ!留学JAPANの応募は、個人が事務局へ直接出願する方式ではありません。必ず、応募時に在籍する高校・大学などを通じて申請します。そのため、募集要項の公開日や機構への申請期限だけでなく、学校内の提出期限、担当部署の確認手続き、面接・研修日程までを含めて準備する必要があります。

2026年度第11期・第18期の募集はすでに終了しています。高校生等対象、大学生等対象の公式案内ページでは、次期募集に関する情報は2026年秋頃に掲載予定とされています。

次回の支援内容、応募要件、留学可能な期間、締切、面接日程は変更されることがあるため、過年度の情報は準備の目安にとどめ、必ず最新の募集要項を確認してください。

2026年度の高校生等対象では、新高校2・3年生は第一日程、新高校1年生は第一日程または第二日程で応募しました。第一日程における在籍高校等から機構への申請期限は2026年1月22日、第二日程は4月21日でした。第一日程では書面審査の通過者に面接審査が行われ、第二日程では書面審査と面接審査を合わせた総合審査が行われました。

2026年度の大学生等対象では、新大学1年生以外の在籍大学等から機構への申請期限が2026年2月27日、新大学1年生は4月23日でした。大学生等対象は、書面審査を通過した人を対象に、対面の面接審査が実施される仕組みです。

◆高校・大学の学内締切は本部締切より早い

応募で最も見落としやすいのが、学校内の締切です。公式の申請期限は「学校から日本学生支援機構へ提出する日」であり、生徒・学生本人が学校へ計画書を提出する日ではありません。学校は、応募書類の確認、家計基準の確認、留学計画が教育上有益かどうかの判断、安全管理体制の確認、オンライン申請の手続きを行うため、独自に早い締切を設定します。

学校によっては、本部締切より数週間前、場合によっては1〜2か月前を校内締切とすることがあります。特に高校生は、年末年始、定期試験、進路指導、学校行事と準備時期が重なりやすいため、次回募集を検討している場合は、募集要項の公開を待たずに相談を始めることが大切です。

海外在住中の生徒、帰国直後の生徒、転入・編入を予定している生徒は、より早い確認が必要です。応募時の在籍校と、転校先の高校等の双方が派遣留学生を支援できる体制を整えていることが条件になる場合があります。

大学から国内大学院へ進学予定の学生も同様です。学校の国際交流担当、進路指導担当、留学支援部署に、留学計画だけでなく、在籍状況、研修参加、学校側の支援可否を事前に相談しましょう。

帰国生が強みを活かす留学計画書の書き方

トビタテの留学計画書では、海外に住んでいた年数、英語資格、学校歴を並べること自体が評価されるわけではありません。重要なのは、過去の経験がどのような問いを生み、その問いを確かめるために今回どのような行動を取り、将来どのように社会へ還元するのかという一貫したストーリーです。

高校生等対象・大学生等対象とも、選考は「人物」と「計画」の両面から行われます。そして公式FAQでは、人物面をより重視すると明記されています。つまり、完璧に整った計画だけでなく、好奇心、主体性、挑戦への意欲、自ら動く力、周囲と協働する姿勢、将来への展望が伝わることが重要です。

留学ジャーナルも、計画書では留学への意欲と独自の視点、明確な目的、目的に合う留学先・期間・探究活動、留学成果の将来への活用、アンバサダー・エヴァンジェリスト活動を示すことが大切だと解説しています。これは、公式資料に示される審査の方向性とも一致します。

◆選考で評価されにくい留学計画とは

評価されにくい代表例は、語学学校で語学を学ぶだけの計画です。高校生等対象では「探究活動」、大学生等対象では「実践活動」を含む留学計画が求められ、語学学習のみの留学は支援対象外です。語学は重要な力ですが、トビタテでは、語学を使って現地の人と対話し、調査し、実習し、実践することが期待されています。

また、「以前住んでいた国へもう一度行きたい」「現地の友人に会いたい」「英語力を伸ばしたい」「海外で視野を広げたい」といった理由だけでは、制度が支援する探究型留学としては不十分です。

これらは大切な動機ですが、計画書では一歩踏み込み、「なぜその国・地域でなければ検証できないのか」「自分は現地で何を知り、何を試し、何を変えたいのか」を示す必要があります。

既存の短期留学プログラム、現地校体験、語学学校、スポーツキャンプ、サマースクールを活用することはできます。ただし、高校生等対象の公式FAQは、既存プログラムの内容をそのまま留学計画にするのではなく、自分で立案・計画する活動を加え、独自性のある計画にする必要があると示しています。

高校生等対象FAQ

たとえば、「カナダの語学学校で4週間英語を学ぶ」だけでは弱い計画です。しかし、「カナダの語学学校で英語力を強化しながら、移民支援NPOで週2回ボランティアを行い、異なる言語背景を持つ子どもの学習支援を観察する。

帰国後は自校の外国ルーツの生徒向け学習支援を調べ、学校内で提案する」と組み立てれば、語学学習が探究・実践を支える手段になります。

◆海外経験を探究テーマへ変える3つの視点

帰国生・海外経験者は、留学計画を「過去の経験」「問い」「現地での検証と還元」という順番で整理すると、独自性と説得力を出しやすくなります。

第一に、過去の海外生活で心に残った具体的な場面を思い出します。

現地校での議論型授業、地域の高齢者の役割、多言語の公共案内、宗教行事、学校の給食、図書館の使われ方、通学風景、環境活動、地域スポーツなどです。「日本と違っていた」と単純に一般化するのではなく、「自分は何に驚いたのか」「なぜそれが気になったのか」を詳しく、情景が想像できるような文章にします。

第二に、その経験を「答え」ではなく「問い」にします。

たとえば、「海外の学校は自由でよかった」ではなく、「生徒が失敗を恐れず発言できる授業は、教師の問いかけ、評価、教室環境、言語支援のどのような組み合わせでつくられるのか」と問います。「海外の高齢者は元気だった」で終わらせず、「高齢者が地域の担い手として参加し続けるために、地域施設や世代間交流にはどのような役割があるのか」と深めます。

第三に、問いを確かめるための具体的な方法と、帰国後の還元を示します。

現地校・大学・NPO・企業・博物館・研究機関・地域団体での活動見学、インタビュー、ボランティア、インターンシップ、資料調査、ワークショップへの参加などを組み合わせます。そのうえで、帰国後に学校で報告会を行う、地域の国際交流団体と企画をつくる、後輩へ留学準備を伝える、探究成果を記事や展示にまとめる、といった形で社会に返す計画を立てます。

たとえば、インドネシアで生活経験のある高校生が、学校で異なる宗教的背景を持つ生徒たちが自然に協働している姿を見たとします。この経験を「インドネシアは多様性がある」という感想で終わらせるのではなく、「多宗教社会の学校では、異なる背景を持つ生徒が日常的に協働するために、授業、学校行事、生徒会活動でどのような工夫が行われているのか」という問いに変えます。

現地校での授業・行事観察、生徒会や教員への聞き取り、教育NPO訪問を行い、帰国後には自校で多文化理解のワークショップを実施する。このように、経験、問い、活動、還元を一本の線でつなぐことがポイントです。

◆語学力と現地ネットワークを実現可能性に変える

帰国生にとって、現地語や英語で直接連絡を取り、情報を得られることは大きな強みです。現地のNPO、大学・研究機関、企業、学校、博物館、図書館、地域団体などに、自分のテーマと活動希望を説明できれば、計画の実現可能性が高まります。

受入先機関は、学校や大学に限られません。高校生等対象・大学生等対象のFAQでは、研究機関、国際機関、海外企業、インターンシップ受入先なども対象になり得ると説明されています。親族宅、知人宅、ホームステイ先など、個人による受入れは受入先機関とし認められています。

しかし、これらの場合は留学活動機関となる受入れ先にはなりませんのでご注意ください。また、活動を証明できる海外の法人・団体等を確保する必要があります。

応募時点で受入先が最終確定していなくても、応募は可能です。ただし、「現地で探す予定」とだけ書くのではなく、第1希望から第3希望までの候補、連絡状況、予定する活動、代替案を具体的に示しましょう。採用後には、留学開始までに受入許可を得る必要があります。応募書類に書いていない受入先へ大幅に変更する場合は、再審査の対象となることもあります。

最初の連絡では、「受け入れてください」とだけ依頼するのではなく、自分の所属、探究テーマ、希望する活動期間、依頼したい内容、相手の負担を減らす工夫を明記しましょう。たとえば、「地域の高齢者センターで週2回、活動見学と職員・利用者への聞き取りを希望しています」「活動後に日本語と英語で報告書を共有します」と書けば、相手は協力の範囲を判断しやすくなります。

計画の発想を広げるには、公式の「留学大図鑑」も役立ちます。2026年時点で2,571人分の留学体験談が掲載され、テーマ・分野から先輩の計画、課題、解決方法を検索できます。内容をそのまま真似するのではなく、受入先をどう探したか、どのように活動を組み合わせたか、帰国後にどう成果を発信したかを学ぶために使いましょう。

留学大図鑑

二次選考の面接で伝えるべき熱意と還元

二次選考の面接では、提出した計画書を暗記して読むのではなく、留学への熱意と、自分の言葉で考えを伝える力が問われます。高校生等対象では対面による個人面接が日本語で行われます。大学生等対象でも、書面審査通過者を対象として面接審査が実施されます。

面接では、「なぜこの国・地域なのですか」「なぜこのテーマなのですか」「なぜ今、あなたが行く必要があるのですか」「現地で計画がうまく進まなかったらどうしますか」「帰国後に何をしますか」といった問いに答えられる準備をしておきましょう。

回答では、結論から先に伝えると分かりやすくなります。「なぜこの国なのか」と聞かれたら、「現地語で当事者に聞き取りができ、探究対象となる制度・団体があるためです」と最初に答えます。その後で、過去の海外経験、現地の受入先候補、活動内容、日本に還元したいことを補足します。

面接でも同様に、「過去の経験」「今回の問い」「現地での行動」「帰国後の還元」がつながるように話すと、計画の必然性が伝わりやすくなります。

◆アンバサダー・エヴァンジェリスト活動を具体化する

トビタテでは、留学先で日本や日本の地域の魅力を発信する「アンバサダー活動」と、留学中・帰国後に留学の魅力や成果を伝える「エヴァンジェリスト活動」が求められます。これは付け足しのイベントではなく、留学を自分だけの経験で終わらせず、社会へ開くための重要な要素です。

アンバサダー活動は、折り紙や和食を紹介するだけでも構いませんが、自分の探究テーマとつなげると、より意味のある活動になります。

たとえば、防災を探究するなら、日本の防災教育や避難訓練を紹介し、現地の取り組みと比較する交流会を開く。地域文化を探究するなら、日本の地域行事や保存活動を題材にし、現地の若者と文化継承について対話する。高齢社会をテーマにするなら、日本の世代間交流の事例を紹介し、現地の地域活動と意見交換する、といった方法があります。

エヴァンジェリスト活動では、「帰国後に発表します」で終わらせず、対象、方法、時期を決めましょう。

「帰国後1か月以内に中学生・高校生向けオンライン報告会を開催する」「文化祭で探究の過程と成果を展示する」「地域の国際交流協会と多文化理解ワークショップを行う」「留学準備中の後輩に、計画書づくりの相談会を行う」など、実行可能な形にすることが重要です。

面接対策としては、保護者、教員、友人、留学経験者に協力を頼み、1分、3分、5分で計画を説明する練習をしておくと役立ちます。質問されて初めて考えるのではなく、「自分の計画の弱い部分はどこか」「なぜ別の国ではなくこの国なのか」「活動が中止になったときの代替案は何か」を自分で問い直しましょう。

帰国生におすすめの活動プラン例

帰国生・海外経験者が持つ強みは、語学力だけではありません。現地社会の日常を知っていること、複数の価値観を比較できること、見慣れた場所にも問いを持てることです。ここでは、その強みを活かせる探究・実践の方向性を紹介します。

【環境】

環境に関心がある人は、かつて住んだ地域の環境NPO、自然保護団体、学校のエコクラブ、自治体の環境部門などで、ボランティアと聞き取りを組み合わせる方法があります。テーマは、海洋プラスチック、森林保全、都市のごみ問題、観光と自然保護、若者の環境教育などです。「若者が環境活動を継続するために必要な仕組みは何か」といった問いにすれば、活動参加だけでなく、比較・分析・提案につなげられます。

【教育・多文化共生】

教育・多文化共生に関心がある人は、現地校、図書館、学習支援団体、移民支援NPO、補習校、地域センターなどでのフィールドワークを考えられます。海外で自分が経験した転校、言語の壁、友人関係、学習方法の違いを出発点に、「異なる言語背景を持つ子どもが安心して学べる場には何が必要か」を探究する計画にできます。

【地域福祉・高齢社会】

地域福祉・高齢社会に関心がある人は、高齢者施設、地域センター、世代間交流プロジェクト、認知症支援団体、地域ボランティアなどを訪問し、職員・利用者・住民から話を聞く方法があります。「高齢者を支援の対象として見るだけでなく、地域の担い手として参加してもらうには何が必要か」「世代間交流は高齢者と子どもの双方にどのような意味を持つのか」といった問いは、社会課題探究やダイバーシティコースとも結び付きます。

【スポーツ・芸術分野】

スポーツ・芸術分野では、競技や演奏の技術習得だけを目的にするのではなく、地域社会との接点をつくることが大切です。たとえば、スポーツクラブが移民家庭の子どもの居場所になる仕組み、障害者の文化活動への参加機会、音楽・舞台芸術が地域の対話を生む方法、伝統文化を若い世代へ継承する取り組みなどを探究できます。スポーツ・芸術探究コースは、実技経験や実績がなくても応募可能です。

大学生であれば、研究機関・海外企業・国際機関・NPOなどでのインターンシップ、実習、共同調査も選択肢になります。大切なのは、有名な受入先に行くことではなく、自分の専門性に照らして、誰に何を聞き、何を観察し、どう成果を測定し、どのように日本へ持ち帰るかを計画書で明確にすることです。

トビタテ!留学JAPANで海外経験を次の探究へつなげよう

トビタテ!留学JAPANは、海外に行くことそのものを目的にする制度ではありません。自分の興味・違和感・問題意識を問いに変え、現地で行動し、得た学びを社会に還元する人を支援する制度です。

帰国生・海外経験者にとって、過去の海外生活は「すでに行ったことがある」から不利になる経験ではありません。むしろ、複数の文化のなかで感じた戸惑い、驚き、疑問、身近な人との出会いは、自分にしか立てられない問いを生む土台になります。

応募を検討するなら、まず「海外で忘れられない場面」を書き出してみましょう。次に、その場面から生まれた疑問を一つ選び、現地で誰に聞き、何を観察し、どんな活動を行うかを考えます。そして、帰国後にその学びを誰へ、どのように返すかを決めます。この順番で考えると、計画書の軸がぶれにくくなります。

また、留学には安全管理も欠かせません。高校生等対象・大学生等対象の公式FAQでは、外務省海外安全ホームページで危険情報または感染症危険情報がレベル2以上の地域は、原則として奨学金の支給対象外となると示されています。渡航先の安全情報、保険、ビザ、緊急連絡体制、学校との連絡方法を早い段階から確認してください。

自分だけの問いを、未来の行動へ変えよう

帰国生・海外経験者の強みは、英語力や海外滞在年数だけではありません。異なる社会の中で、自分の常識を問い直した経験、他社の話を聞きながら関係をつくった経験、複数の価値観の間で思考を培ってきたきた経験にあります。

トビタテ!留学JAPANへの応募では、その経験を華やかな実績として見せるよりも、「だから私はこの問いを持った」「だから現地でこの行動をしたい」「だから帰国後にこの形で還元したい」と伝えることが大切です。

次回募集のコース、募集人数、給付額、対象学年、応募期限、面接・研修の日程は変更される可能性があります。応募を検討する場合は、必ず最新の募集要項を確認し、在籍する高校・大学の担当者へ早めに相談してください。自分だけの海外経験を、次の探究と未来の行動へつなげていきましょう。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。


 


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