アメリカで補習校に通う意義とは?日米バイリンガルの子どもの育て方
ーあさひ学園の先生方へインタビュー
アメリカ ロサンゼルスにあるあさひ学園は、幼稚部、小学部、中学部、高等部を設置している大規模補習授業校です。
2019年に創立50年を迎え、サンタモニカ校、サンゲーブル校、トーランス校、オレンジ校の4校があり、約100名の教職員が毎週土曜日、各校で授業を行っています。年間行事は、入学・卒業式、学習参観・懇談会、避難訓練、運動会、高等部弁論大会、幼稚園餅つき、歯磨き指導などがあります。
今回は、西校長、筒井先生、鎌田先生の3名へ、アメリカで補習校に通う意義、保護者・生徒へのサポート体制などのお話を伺いました。
〜先生方のプロフィール〜
西 克夫(にし かつお)校長 2023年4月からあさひ学園の校長に就任。千葉県での教員勤務とアムステルダム日本人学校での勤務経験あり。 |
筒井 由美子(つつい ゆみこ)先生 2015年からあさひ学園勤務。現在、サンタモニカ校 高等部グローバルコース主任で高1の担任。担当教科は国語・比較表現。あさひ学園では小・中学部の担当実績あり。他に日本語教師・日本語能力試験問題集の筆頭執筆者。 |
鎌田 幸二(かまた こうじ)先生 2014年からあさひ学園勤務。現在、オレンジ校 高等部主任で高2の担任。担当教科は国語。あさひ学園にて小・中学部教員および、教務主任も担当。自身の子女があさひ学園在籍。 奥様はあさひ学園卒業生。平日は自営業を行う。 |
まずは、御校で好きなことを1つ教えてください
西校長:私が好きなのは本校が重視している「学び合い」ですね。授業の中で、自分たちで課題を話し合ったり、悩んだり、討論したり。子どもたちが一生懸命学んでいる姿が自慢です。
筒井先生:私は「生徒が議論好き」という点です。他の学校と比べてもこれは誇れる部分ではないかと思います。生徒がびっくりするほど、ディスカッションやディベートが大好きでこれを楽しんでいる部分が好きです。
鎌田先生:「アメリカにいるけど、一歩学校に入ると日本の学校の空気を味わえる」という点があさひ学園の一番の魅力だと思います。いろいろなバックグラウンドを持つ子どもたちが、日本の学習やコミュニケーションの取り方などを一同に学べる点が良いなと思います。
アメリカで補習校に通う意義はどのようにお考えですか?
鎌田先生:現地校と補習校に通うからこそ、お互いの良いところや相違点に気づき、自分が今後どうありたいのか、と考えるきっかけが生まれます。双方の学校の違いを認め合って、高め合うことが子どもの人格形成に役立ち、それが現地校と補習校両校に通う意義ではないかなと思います。
筒井先生:補習校に通うことは、「地球市民」を目指す意味で大きな役割を果たします。二つの学校に通い、異なる文化を知ることによって視野が広がり、自分を客観的に見る力がつき、メタ認知も備わります。この力は「人と人」、「文化と文化」、「国と国」が接触する時に大きな力を発揮します。補習校出身者はその際重要な役割を果たすことができ、多くの事例を生徒にも共有しています。ぜひ、日本にルーツを持つご家庭は補習校にも通ってほしいと思います。
西校長:「アメリカ現地校のアメリカ的思考」、「日本人学校の日本的思考」と二つの思考回路を持てることの意義は大きいです。これはグローバル人材を育てる上で重要な力だと思っています。そして補習校に通う生徒には「日本式」「アメリカ式」という狭い考えに縛られることなく、地球規模で世界で通用するような人材に育ってほしいと考えています。
現地校と補習校の両立が大変という生徒、親御さんにはどんな働きかけをしていますか?
筒井先生:私は、生徒本人、保護者(ご家庭)、学校の三者が共有意識をもって話し合いをすることが重要だと思います。学校としては生徒に「知識が広がることが楽しい」、「アイデンティティを共にする友だちと勉強することが楽しい」と思わせることが大事だと思っています。一方で、保護者の方にはぜひお子さんに興味を持って話をしてほしいと思っています。お子さまがどういう興味を持っているかを知ることで、学校側も世界で活躍している補習校出身者の話をしたり、夢を広げる情報提供をすることができます。さらに補習校を続けることによって「必ずいいことがある」という意識をもてるように後押しするよう、心がけています。
西校長:あさひ学園の特徴は幼稚園部から高等部までの生徒が同じ学校で学んでいることです。行事などで学年の垣根を越えて触れ合うことにより、高等部の充実した学びを小中生も見ることができます。それにより、小中生が「今は現地校と補習校の両立がつらいけれども、頑張ることであんなふうになれる」と縦の関係から刺激を受けています。また、高校生は卒業生の活躍を見ることで将来のイメージが明確になり、それが一つのモチベーションになっていると思います。
鎌田先生:あさひ学園では、「保護者は第二の担任」と呼んでおり、僕個人としては「教員は第二の親」であると考えて本当の親さながらに行動しています。そうすることで、生徒や保護者の方と同じ目線で大変さを共有し、一緒に問題解決を行っています。生徒には「勉強は大変だけど分かれば楽しいよね」と理解してもらい、保護者の方には「学校に送り出してくださりさえすれば、楽しく過ごせるよう心がけるので、とりあえず来て下さい」と安心してもらいます。三者の良いチームワークを作ることが大事だと思っています。一緒に成長を見守ることが僕の楽しみです。
西校長:「保護者は第二の担任」というお話は私もよくしますが、「教員は第二の親」という発想にはハッとさせられました。先生方全員が意識できることではないかもしれませんが、鎌田先生がそのようなお気持ちで現場に臨まれているのは本校の強みであり、本当に嬉しく思います。
日本の公教育をアメリカで受けることの意義はどのようにお考えですか?
西校長:(日本の学校では週5日かけて学ぶところを、補習校では週1日で学んでいるので)よく私たちは「家庭は第二の教室」、「本来学ぶべき5日間のうち、残りの4日間はご家庭でカバーしてください」と言うことがあります。しかし、鎌田先生が言う通り、同時に「第二の親、第二の家庭」でもあります。あさひ学園で過ごす1日が家庭の延長として子どもたちがホッとできる場所でもあってほしいと感じます。親と同じ感覚で先生が出迎えてくれる教室など、子どもにとって「居場所感」があさひ学園にはあるのかなと思います。
筒井先生:これからの社会を考えると、日本的な教科の教え方は変わらなければならないところが多いと私自身は考えています。けれども、日本の教育の中で「掃除をする」、「給食の配膳をする」ことから周囲の人との協力の仕方を学んだり、自分の身の回りの整理整頓を重視して教育をすることはアメリカにいても身につけるべき大事なことと思います。また、社会の中でどう生きていくか、他者との関係性、良好な人間関係の構築方法など、日本の良い教育(賛否ありますが)もそのまま伝えて行きたいと思っています。
その他には、日本の学校だからこそ行き渡っている常識、例えば「地震(災害)発生時の行動」は、日本でなくとも世界中の災害発生時に役立つ知識ですよね。こういった日本発、全世界に必要な教育も「地球市民としての視野を持つ」観点から積極的にとりいれています。
鎌田先生:まず、社会科の歴史を例にとりますと、同じ事象でも「日本の視点」、「アメリカの視点」で見方が違うことに気がつきます。双方の視点を知ることで、自分の中の「当たり前」がそうではないと気づき、また、国によっても見方が違うということに気づきますよね。それが、アメリカで日本の公教育を学ぶ意義だと僕は考えています。
また、日本では生徒が教室を掃除し、アメリカでは掃除専門の方がするという違いがあります。日本では「自分で使ったものは自分できれいにする」、「ゴミが落ちていたら自分で拾うのが当たり前」、「感謝の気持ちを持って借りたものは借りた時以上に綺麗にして返す」教育をしますよね?アメリカの異なる環境の中で敢えて日本のこのような文化を学び、内面的な成長を感じるのは意義があることだと思います。
御校で学ぶ生徒はどのような力を身につけて欲しいですか?
筒井先生:私は先ほども申しました通り、「地球市民」の育成を目指しています。一例をあげると、世界銀行のエボラ熱緊急対策チームの最年少リーダーとしてご活躍された馬渕俊輔さん。文化、宗教、衛生概念、政治、コミュニティが異なる人びとで構成されているチームをまとめあげ、感染拡大阻止に努めました。より良い未来へ向かうプロジェクトの一員として、多様な文化などの衝突をまとめていける人材。生徒の将来像としては、彼がロールモデルです。
鎌田先生:「アメリカ人だから」、「日本人だから」という考え方にとらわれず、二つの国をつなぎ、「一つの星に生まれた人間」として生きてほしいと思います。もちろん、アメリカと日本の違いはありますが、その中で良さを認め合い、それを自ら発信していけるような大人になってほしいですね。
西校長:日本語で教えている学校なので、グローバル人材として活躍しても、日本人としてのアイデンティティを根底として持っていてほしいという願いはあります。
また、補習校生の中には「アメリカでアメリカ人になりきれない」「日本でも日本人になりきれない」と中途半端なアイデンティティに関する悩みを抱えている子が多いと思います。けれどもその悩み、葛藤する経験こそが社会的に弱い立場の人や不安定な立場の人の気持ちを汲みながら、グローバル社会で力を発揮できることにつながると思っています。
あさひ学園への入学を検討しているご家庭へメッセージをお願いします
西校長:あさひ学園は学校での滞在時間が他の補習校に比べて圧倒的に長いです。滞在時間が長い分「負担が大きい」ということも言えますが、一緒に過ごす時間が長いほど、絆が深まり、困難を乗り越えた時の成長は大きいものです。このようなお子さまの成長した姿をイメージしていただけるご家庭は、ぜひご検討ください。
筒井先生:あさひ学園には「日本(=日本的教育、日本的文化)」、「アメリカ(日本とアメリカをお互い理解する、共存する世界)」、「プラスアルファ(=日本とアメリカが共存することによって生まれる世界)」があると考えています。日本文化とアメリカ文化を付き合わせたときにどういうものが生まれるか。それをさらに高めたい、深めたい方はぜひお待ちしております。
鎌田先生:あさひ学園の1番の魅力は「先生方が素晴らしいこと」です。子どもたちに学ぶ楽しさ、友達と関わる喜び、できたという達成感を味わえるところがあさひの魅力。世界に羽ばたいたこともつながりあえる、卒業したあとまでつながっていけるのは、あさひだからこそ。その一員になるべく、ぜひ来ていただけたらと思います。
西校長:最後に鎌田先生や筒井先生のような愛のある、素晴らしい先生方があさひ学園にはたくさんいるのでぜひご検討下さい!
学校情報
ロサンゼルス補習授業校 あさひ学園 電話番号:+1 (424) 396 3800 E-mail:info@asahigakuen.com WEBサイト |
カリキュラム
<幼稚部 9:00-15:00> |
休憩をはさんで4時間の保育 ▪言語 ▪音楽リズム ▪絵画制作 ▪季節の行事など |
<小学部 8:45-15:30> |
小1〜小2 ▪国語(3) ▪算数(2) ▪学習教室(1) 小3〜小6 ▪国語(2) ▪算数(2) ▪社会(1) ▪理科(1) |
<中学部 8:45-15:30> |
▪国語(2) ▪算数(2) ▪理科(1) ▪社会(1) (地理・歴史・公民) |
<高等部 8:45-15:30> |
高1 ▪現代の国語(1) ▪論理国語(1) ▪言語文化(1) ▪数学Ⅰ・A (2) ▪歴史総合(1) 高2 ▪現代の国語(1) ▪論理国語(1) ▪言語文化(1) ▪国語表現(1) ▪数学Ⅱ(1) ▪公共(1) |
<サンタモニカ校 8:45-12:50> |
高等部グローバルコース 高1・2 ▪日英 比較表現(1) ▪現代の国語(1) ▪論理国語(1) ▪言語文化(1) |
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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