HOMEお役立ち記事【連載第4回 Aレベルとは?】AレベルとIBDPどちらを選ぶ?

【連載第4回 Aレベルとは?】AレベルとIBDPどちらを選ぶ?

磯崎みどりです。これまでAレベルについて第1回ではAレベルの概要、第2回ではAレベル日本語の概要、そして第3回でインター校で唯一Aレベルも選択肢としているTanglin Trust SchoolでのAレベル日本語の指導と選択のメリットなどについて書いてきました。今回第4回では、もう一度Aレベル選択そのものに話を戻し、どのように考えてAレベルを選択するのがいいのかについて書いてみたいと思います。

【連載】

AレベルとIBDP(インターナショナルバカロレアディプロマ)

IBDPがシンガポールの多くのインター校の高校卒業までの最後の2年のカリキュラムとして主流となる中、その科目数の多さや求められる課題の多さ、そしてボランティアやサービスに割く時間の長さなど、時間に追われる生徒が多く見られ「IBDPを選ぶべきではなかった!」と後悔する生徒さえも見てきました。

以前、どのような生徒がIBDPを選択すべきで、どのような生徒がAレベルに向いているのかについて書いたことがあります。今回は再度、2つのカリキュラムを比べ、Aレベルを振り返ってみたいと思います。

まず、思い違いをしないでいただきたいのは、Aレベルの方が簡単で、IBの方が難しいだとか、IBの方が点数を取りやすい科目があるとか、大学を受験するには〇〇カリキュラムの方が入りやすいといった、カリキュラムの難易度や大学受験に対する有利性があるというのは間違いであって、決してどちらが特に難しいということはなく、どちらがそれぞれの生徒に合うかを見極めることが重要です。ですから、それぞれのカリキュラムのイメージで選択しないことです。

授業料だけでなく、入学金の支払いもあるので、一旦入学を決めた学校から別のインター校に転校することは費用もかかることなので、簡単に決められることではありません。ですから最初に学校選択をする際に慎重に考える必要はあるとは思いますが、小学生ぐらいの学齢では、ご自分のお子さまの高校最後の2年間のシステムとして、Aレベルがよいのか、IBDPがよいのかは決められるとは限りません。そこで、いつ、どんな場合にAレベルを選択するかどうかを決めるといいかについて実例を挙げて考えてみましょう。

Aレベルがぴったりだった場合

Hさんは、高校卒業の最後の2年をAレベルを選ぶべく、それまで在籍していたIB校からTanglin Trust Schoolに移籍しました。彼女は得意科目が明確で、Aレベルの科目選択に最低限必要な3科目に加えてさらに得意科目を追加した4科目を選択したことで、十分に力を発揮できたと言います。それぞれの科目は決して内容は簡単ではありませんが、彼女にとってはすべて得意科目で揃えられたことから、時間的な余裕があり、好きなスポーツに力を注ぐことができたと言います。

科目数が少ないということだけで選ぶのは間違っていることは重ねてお伝えしなければなりませんが、IBDPの場合は得意であったとしてなかったとしても6科目が必須なので、それが合わない、もしくは3科目選択の方が自分に合っている、と考えるなら、Aレベルを選択する方がメリットが大きい場合がある、ということです。

ではなぜIBDP校が多いのか?

上記のような例があるにもかかわらず、なぜシンガポールのインター校にはIBDP校がこんなに多いのでしょうか。それは、シンガポールが多言語国家であり、母国語を重視する考え方に、IBの理念が合うからと言えるでしょう。IBの理念は次のように書かれています。

「インターナショナルバカロレア(IB)教育は児童生徒が自分自身のものの見方、文化、アイデンティティーを振り返り、 そして他者のそれに対しても同様に振り返りを行うことを促すことで国際的な視野を育みます。」

「IBの教育は多言語主義を通じて国際的な視野の発達を促します。児童生徒はすべてのIBプログラムにおいて、複数の言語で学習を行うことが求められ ます。これは、複数の言語でコミュニケーションを行うことは異文化への理解と敬意を育むためのすばらしい機会を与えてくれる、というIBの信念に基づくものです。それは、児童生徒が自身が言語、文化、世界観が数ある中の1つでしかないことを理解する助けになります。」

Aレベルがイギリスのシステムであるのに対し、IBDPは「国際」と名がつく意義を伝える理念と言えるでしょう。

以前にも書いたことがありますが、IBDPは科目数が多いこともあり、誰でも簡単にこなせるカリキュラムではありません。だからと言って、上記にも書いたように、Aレベルも科目数が少ないから簡単だということは決してないのですが、得意であったとしてもなかったとしても6科目を必修科目とするより、選びやすいと考える生徒もいますので、よく考えてカリキュラムを選択することをおすすめします。

ちなみに、繰り返しになりますが、Tanglin Trust Shoolは、インター校の中で唯一、IBとAレベルの両方を選択肢として準備している学校です。どちらを選択するかは、生徒の希望、学校側との協議で決めています。

まとめ

結局、3科目がいいか、6科目を選ぶかは、生徒が自分の個性をよく知った上で選択することが重要なのだと感じます。以前あるIB校では、あなたはIB選択には向きませんよと、6科目を選択することが向かない生徒にはその旨伝えていました。それは物議を呼び、「我が子にIBを選択させないのか!」とお怒りになる保護者もいらしたようで、今そのような、いわゆる「肩たたき」と呼ばれた大学カウンセリングはしないのではないかと思うのですが、あながち間違った方向性ではなかったのかもしれないと思うこともあります。少しだけの無理が成長を促す範囲であれば頑張りとなりますが、無理がすぎると無茶でしかなくなるので、科目数についてもよく検討することは大切だと考えます。

4回にわたってAレベルについて書いてきました。ローカルのJunior CollegeもAレベルを高校卒業テストとして使用していますが、言語選択の自由度などはインター校の場合と大きく違うため、ここではインター校の実情にとどめ、Aレベルについての投稿を終えたいと思います。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。さまざまな環境の子どもたちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校はさまざまなコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご連絡ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

最新情報をLINEとメルマガでお届けしています!ぜひお友だち追加・フォローしてください。

お役立ち記事の一覧へ