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【〜連載〜海外生とIBプログラム】第2回IBDPと海外大学受験~IBDPでの科目選びやIBDPの強み~ 

こんにちは。磯崎みどりです。今回は大学生活を送りたいと思う国の大学受験ではIBDPをどう評価するのか、また、IBDPの科目選択には特別な選択の仕方があるのか、といったことから始めます。そして、IBDPの強み、さらには、逆にこういった生徒はIBDPより、他のプログラムが向いているのではないかということなどについても少し書きたいと思います。

【連載記事】
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どの国で大学生活を送るのか

IBDPの向き不向きなどについて語る前に、どこの国のどの大学で大学生活を送ろうとするのかということも、IBDPの得点の威力の違いに影響することをお伝えしておきたいと思います。IBDPの総合計点だけが重要で、どの科目を選択しているかはあまり関係がない場合もあれば、専攻しようとする科目について、どれだけ知識を持っているかが重要である大学・学部もあります。

また、受験者の国籍が影響し、外国人であることがメリットとなる国があったり、本国の学生優先の国もあったりと、どこで勉強したいと思うかによってできる対策はさまざまなので、どこかの大学に引っかかるだろうと、あっちの国もこっちの国もと多数の国の大学を受験することは、あまりおすすめできません。

国別だけではなく、大学別に特色がありますから、ここではおおよそのことをお伝えするだけになりますが、今まで指導した生徒の進学先からいくつかの例を挙げておきましょう。

まず、米国受験については、アメリカ人と外国人の間ではっきりと合格者数が違います。アメリカ国籍を持つ生徒と、いわゆるインター生と言われる生徒の比率は、外国人が多く在籍する有名大学でも、9:1ぐらいがほとんどです。

外国人の割合がもう少しだけ多い大学も、少ない大学もありますが、だいたい非米国籍の合格者の割合は1割と言ったところです。もちろん、競争率の高い大学の場合、アメリカ国籍を持っているからと言って合格できるわけではないですが、そういった大学では外国人枠はさらに競争が激しいということは間違いありません。

そして、米国受験の場合は、学業で良い成績をとるだけでは合格できません。逆に言えば、成績より何を学びたいか、どれだけその生徒が大学に貢献できるかによって合格者を決めるため、SATで満点でも不合格となる場合もあれば、成績はあまり振るわなかったものの、特別な「何か」があり、合格する生徒もいます。

その特別な「何か」は、大学や学部によってさまざまなため一様ではありません。インタビューが決め手となる生徒もいれば、エッセイの内容で決まったと思われる生徒もいて、インタビューの受け答え、エッセイの内容から科目の選択の仕方などまで、すべてを総合して合否が決まります。

一方、英国受験の場合は、IBDPの最終試験の点数によって合否が大きく左右され、専攻したいと思う学部、学科に直接関係する科目でどれだけ得点が取れるかが勝負です。IBDPは6科目が必須ですが、英国の場合はA Level同様、IBDPのHigher Levelの3科目の点数が重要で、Standard Levelの3科目の点数は個別に問われず、合計点のみで判断されるのが一般的です。

しかし、成績にはまったく問題はなかったものの、インタビューで専門性が足りないと判断された生徒や、逆にあまりにピンポイントで専門的に勉強したいと思う内容を伝え、大学側にその内容は会わないと考えられたのが敗因ではないかと話した生徒の例も聞いているので、インタビューも合否を左右する大きな要因であることは間違いありません。

カナダは、どちらかというと外国人受験生の受け入れに寛容だと聞いています。米国受験と比べると、同じ北アメリカでも「入りやすさ」は違うようです。ただし、卒業も簡単ということではなく、大学に合格したからと言って、それはあくまで入り口であって、出口は自分で歩いて探さなければならないといったところでしょう。

また、オーストラリアは英国より受験生に寛容だということで、英国受験ではなくオーストラリアを選択するという生徒もいるようです。ただ、オーストラリアも決して「簡単」に卒業できるということではないようなので、自分の興味によく合っているのかどうかを調べて見る必要があります。

ここまで書いてきた米国と英国は、親として、教師として受験を見てきたので分かることをできるだけ書きましたが、カナダとオーストラリアは聞きかじりのことだけを書きました。

また、日本についてはここには書きませんでした。それぞれ興味のある大学の受験については、先輩の話を聞く、大学に直接問い合わせるなど、詳しく調べてほしいと思います。

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IBDPでは特別な科目選択方法があるのか

なぜこのような問いを挙げるかというと、私が一番よく保護者から尋ねられる質問が、「どの科目を選択するのが簡単ですか」「日本語は難しいから選択しない方がいいですか」という科目の難易度を問うものだからです。保護者が心配なのはわかりますが、実際に学ぶのは生徒本人です。ですから、まず、科目選択については、高校生が選択したいと考える教科を尊重しましょう。

しかし、場合によっては生徒からこのような質問をされることもあります。好きな科目や得意な科目は、生徒自身が一番よくわかっているでしょう。ですから、行きたいと思う大学の学科、専攻が必須科目としてある科目選択を求めてくるのであれば、それはいくらあまり得意でなくても頑張ってみようと思うことは重要だと思います。

ただ、シンガポールでは学校によっては、科目選択に「待った」をかけて、点数が取れる科目だけを選択させるところもあります。そういう場合は、選択したくてもできない可能性もあります。また、多くの場合、まったくの苦手科目を選択科目として選ぶことはないと思いますが、選択するかどうかを迷うぐらい、「あまり得意ではない科目」であるなら、難易度で考えるのではなく、頑張れると思う科目を選択するといいのではないかと思います。

つまり、「IBDPでは特別な科目選択方法があるのか」という問いには、「ない」と答えることになり、どの科目を選んでも特に簡単ではなく、特に難しいわけでもないので、難易度で判断したつもりでも、思っていたのとは違った、ということにもなりかねません。この科目を学びたい、学んでおきたい、と考える科目を選択することが重要だと考えます。

IBDPの強み

連載第一回目にIBDPが向いている生徒はどういった生徒であるかについて、私なりに生徒を見ていて強く感じることを書きました。IBDPがどんな生徒に向いているのか、ということを書くにあたり、IBDPを選択した生徒は大学によってどのように評価されているかについて見ていきます。

まず、連載第一回に詳細を書いたように、IBDPは科目数が多く、その上、ボランティアや音楽、芸術、スポーツといった活動にも取り組むことがプログラムにCASとして盛り込まれていることから、IBDPで好成績を取る生徒は、学業だけではない時間をうまく管理する学生となるとみなされ、多くの大学でIBDPを修了した生徒を高く評価します。

特にアメリカの場合は、課外活動や学業以外の取り組みも重視され、エッセイやインタビューを通して高校生活4年間の活動を問われることから、必須科目CASとしてそういった活動に取り組まねばならない仕組みとなっていることは、生徒は学業以外にも力を入れざるを得ないこととなり、ひいてはそれが強みとなります。

また、6科目という多くの科目を学習する中でも、全科目において高得点が取れる生徒は、オールラウンドの生徒として評価されます。そのため競争率の高い大学では、IBで高得点を取得している生徒を合格させたいと考えることには納得できますよね。

IBDP以外のプログラム向きの生徒とは

さて、オールラウンドの生徒として評価されることは大変光栄なことだと思いますが、生徒の力の発揮の仕方には個人差があり、得意の科目に絞ったなら存分に力を発揮できる生徒もいます。

実際、科目数が多く、取り組まねばならない課題や活動の多いIBDPを選択した生徒の中には、その多さに潰されてしまって疲弊してしまう生徒もいます。科目を絞った学習プログラムで学ぶ方が向いているのではないかと思われる生徒も見てきました。

したがって、3科目選択すればよい英国式のA Level(イギリスの大学入学資格として認められる統一試験)や、自分で選択する数を決められる米国式のAP(Advanced Placement)など、IBDPだけが高校の最後の2年の教育プログラムではないので、他のプログラムを含めて検討してみることは大切なのではないでしょうか。

まとめ

IBDP以外にも教育プログラムがあるにもかかわらず、IBDPがとてもいいプログラムだから、評判のいい学校だから、という観点で高校最後の二年間のプログラムを選ぶと合わないこともあるということをよく理解した上でプログラムを選択されることをおすすめするとともに、一旦IBDPを選択した際には、オールラウンドの生徒として評価されるよう、学科の勉強だけではなく、さまざまな活動に取り組んでほしいものです。

ただ、すべての生徒に忘れてほしくないのは、大学受験のためだけに科目を選択し活動を行うのではないことです。大学のアプリケーションに書くためだけにインターンをしてみたり、新しい活動を始めたりということは、きっかけとして始めるには悪くないと思いますが、せっかく始めるなら、ぜひ、自分のライフワークにできるような興味のあることに取り組んでみることをおすすめしたいです。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。

様々な環境の子供たちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校は様々なコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご連絡ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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