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【連載第5回 アイビーリーグ合格への道】帰国子女の大学受験~親としてできることは?子育ての基本~

磯崎みどりです。そろそろアメリカの大学の合否がほぼ全て出そろう頃でしょう。合格者として選ばれた大学は、大学側からの「ほしい生徒像」と「学びたい生徒の思い」が一致した大学ですから、ぜひ、秋以降の新しい大学生活に期待を寄せてほしいと思います。

今回は、大学受験の学生が小学校、中学校の時から、親としてどの様なことを考えて支援することが、後の大学受験の際に役立つのかについて、私の経験をもとに支援の仕方を書いてみたいと思います。

【連載】
【連載第1回 アイビーリーグ合格への道】アイビーリーグ8大学の特徴は?大学や大学院の違いもご紹介
【連載第2回 アイビーリーグ合格への道】アメリカの大学に行くには?大学の選び方や種類を徹底解説!
【連載第3回 アイビーリーグ合格への道】アメリカの大学受験の流れやエッセイ対策方法を解説
【連先第4回 アイビーリーグ合格への道】帰国子女の大学選び~大学のカラーとは?~

どのように親は子どもを支援すればよいか?

私は夫の留学に同伴し、海外で子育てをすることになり、日本を出てから早30年近くになった現在、振り返ってみると、特に早期教育を心掛けたわけでもなく、特別変わった習い事をさせたこともなく、「普通の/一般的な」子育てをしてきたと感じています。

私個人の意見ですが、私は早期教育は子どもの発達をよく見極めないと意味のないものであり、さらには途中でやめてしまうなら無駄だと考えていて、一旦始めることを決めたら継続させることを心掛けていました。ですから、娘が何かを「やめたい」という時には、その理由が何なのか、止めることのメリットについて親を説得できるならば許可するものの、説得できない内容であるなら、幼いころでも、高校生に成長してからでも、考え直すように話してきました。

もちろん、始める時にも継続ができることを中心に選んでいたので、「学習の先取り」という考え方も好きではなく、娘の成長を無理に引き延ばすようなことは絶対にしないようにと考えていました。

こんなことがありました。Grade4の時のインターナショナルスクールの担任の先生は、保護者の意見をよく聞き入れる先生で、Parent Teacher Conference(保護者面談)の時に、「宿題の量はどうですか?多くの保護者がもっと宿題を出してほしいと言われるのですが、あなたはどう思いますか?」と尋ねられたのですが、私は「今のままで十分です。」と答えました。

強制的に取組まないといけない宿題に多くの時間を費やすよりは、外で友だちと遊ぶ時間を多く取り、何より本を読む時間を確保してやりたいと考えていたので、宿題は増やしてほしいものではありませんでした。娘には日本語と英語、そして、シンガポールに来てから加わった中国語の3つの言語の学びが必要なだけに、宿題が増えれば何かを削らなければならなくなることが分かっていたので、そこそこの宿題の量を提示してくれるその担任の先生は我が子には合っていたと思います。小学生の間は、担任の先生と同様のやり取りをしながら、十分な読書の時間を取ることができました。まずは十分な読書の時間を取ることが、親の子育ての際、最も重要な最初の支援だと考えます。

では、本さえ読んでいればいいのか?

では、本さえ読んでいればいいのか?という問いが次に来るでしょう。本は読みっぱなしでは漫画を見る、ただ字面をたどるのと大きな変わりはないかもしれません。本は、読んだ後、その内容を要約して伝えるために他の語彙を使って言い換えることができ、内容に対する自分の意見を伝えることができて初めて本当に理解したことになると考えます。子どもが、特に小学生の間に、本を読んだらその内容を伝える習慣を身に付けるべきだと思います。そのために親はただ本を与えるだけでなく、本の内容について一緒に語る時間を取るようにすべきでしょう。もちろん読み聞かせでもいいのです。

子どもによっては、本の内容を尋ねられたら、「知らない」・「おもしろくなかった」などとそっけない返事をする子もいるでしょう。親も同じ本を読む、もしくはすでに読んだことがある本を読ませて、親の方から「・・・のお話だったね」といったように、話の解釈を伝えるのもいいでしょう。面白かったところ、好きだったところだけを抜き出すように指示するのもいいでしょう。

「自分で考える」を大切に

IBを指導していて感じるのは、如何に自分自身の考えを持つことが大切かということです。また、「文学」を指導していることから、作品を「感じる」ことの大切さも同時に感じます。言葉をイメージ化できることは多くの作品に触れることで身に付くように思います。つまり、出来るだけ多くの作品に触れてきた子どもたちは、文学の伝えることを読み取ることが得意になれると思うのです。自分でお話を作ることも、文学理解に大きく貢献します。

こうやって見ていくと、小学国語教科書が指導内容として設定していることは、すべてを網羅している素晴らしいものであることが分かってきます。そして、単にプリント学習を繰り返したり、漢字練習をすることだけでは文学の理解に繋がらないことは自明のことでしょう。もちろん日本語の文学を理解するためには漢字を覚えることも必要です。しかし、何より大切なのは、新しいことに取り組んでみようというチャレンジ精神を持つことや、答えを教えられてそれを覚える作業ばかりに取り組むのではなく、自分で考えようと努力することです。

アメリカの大学、特に競争の激しい人気大学(もちろんアイビーリーグの大学がその中に含まれます)は、チャレンジ精神旺盛な学生を求めています。また、自分で考え、自分で答えを導き出せる学生は、チャレンジを求めると感じます。少し難しくても「やってみよう」と思う学生、特に外国人(非アメリカ人という意味です)としてアメリカの大学を受験する場合、並み居る競合相手を押さえて選ばれる生徒になるには、自分をアピールできる力は絶対に必要です。簡単に点数が取れそうだから、という理由で科目を選ぶというような考え方は、たとえ成績で高得点を取れたとしても、決してチャレンジ精神のアピールにはならないことを忘れてはいけないでしょう。

親の支援は日本語で?英語で?

皆さんは「4年生の壁」という言葉をご存じでしょうか。小学4年生は、それまでの学年の生活に則した具体的な内容から抽象的な内容の学習に変化していく学年です。これは日本だけではなく、ほぼ万国共通で、子どもの発達段階に合わせたステップと言えます。ですから、お子さんのメイン校がローカル校やインター校で英語で普段学習し、日本語の学習は学外の学習機関で学んでいる場合、教科書を使って学んでいれば、小学4年生になった時点で少し学習内容を難解だと感じ始めても当然のことかもしれません。

そんな年齢の子どもの学習支援をするには、親は日本語で支援するのがよいのでしょうか?それとも英語で支援するのがよいのでしょうか?(この記事をお読みの方々は日本人で、お子さん方をローカル校やインター校に行かせているということを前提の質問です。)

当然のことながら、宿題など、ローカル校やインター校では、提出物は英語で書くことになるのですが、そのためには英語で支援すべきと考えられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。小学4年生以上の学習内容をすべて英語で支援できる英語力をお持ちの保護者はどうぞそのままご家庭でも英語で支援をなさるといいでしょう。

たとえば、片親が英語のネイティブスピーカーである場合は問題なく支援できるでしょう。でも、もし、両親ともに小学4年生以上の学習内容を英語で支援するには不安がある、もしくは、日本の国語教科書の内容を英訳するのは、せいぜい小学1、2年生だという保護者の皆さん、確実にお子さんと高度な知識について会話ができるようにするためにも、日本語を残してあげてください。

親が日本語を話していれば、子どもたちは勝手に日本語を話すようになると思っていた、という保護者がいらっしゃいます。そんなに簡単に言語は継承されません。親の努力があってこそ、言語は継承されていくのです。社会情勢や文学論評など、高度な内容を親子で語れるようにするためには、親にとっての母語を家庭内で使用することは大切なことです。

塾や学習機関に指導を任せておけばよいという考えを持たれる方もあるでしょう。でも、アイビーリーグの大学で学ぶような学生の多くは、それぞれの家庭で保護者との知的な会話の中で知識を身に付けてきています。新聞の切り抜きについて親子で語ったり、一緒に見るニュースについて話したり、といったことからごく自然に知識を身に付けていくことが、自分で考える力となっていくのです。

ですから、やはり親子で語る言語は、保護者が自分の母語だと考える言語で持っている知識を伝えられるようにすることと、子どももしっかりとその母語を身につけられるようにすることは重要です。日本人の多くはそれは日本語なのではないかと思います。もし、中途半端なレベルの英語しか使えないのであれば、英語での会話はやめ、母語の大切さを親子で共有するところから支援を始めてはいかがでしょうか。

まとめ

親に全教科において「4年生の壁」を乗り越えられる英語力があると思えないなら、日本語で話しかけることを心掛けるところから始め、親子で一緒に本を読み、その内容を語る、そして、たとえ中学生、高校生と成長していっても、親子で同じ記事やニュースを共有して読みそれについて語る、といったことが基本となり、自分で考える習慣を身に付けるためにも、与えられたことだけをこなすのではない学びを大切にすべきと考えます。与えられたことの中で動くのではない学びを続けることで、チャレンジ精神も生まれてくるのではないでしょうか。

これまで5回にわたってアイビーリーグ合格への道というタイトルで書き綴ってきましたが、結局書きながら、アメリカだけに当てはまることではないなあと、我ながらの気づきを持って記事にしていました。この第5回で書いた、子育ての基本は、大学受験だけではない、自立して生きる子どもを育てることに繋がるのではないかと思います。どうか皆さんのお子さま方が、自分で考え、新しいことに挑戦することを厭わない子どもに育ちますようにと願って、今回の連載を終わりたいと思います。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。さまざまな環境の子どもたちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校はさまざまなコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp にご連絡ください。

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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