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【〜連載〜帰国前にできること】第四回インター校の選び方と注意点 日本のインター校を検討している皆様に向けて

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はじめに

磯崎みどりです。帰国される方が帰国される前に知っておくといいことを中心に、どうなればバイリンガルであり、どのような言語レベルであるべきかなど、回を追って書いてきました。今回は、特に日本人のご家庭を対象に、日本に本帰国した際にもインター校にお子さんを通わせることを検討している方々に一言、思うところを書いていきます。シンガポールのインター校に子どもを通わせた経験から、日本人家庭がインター校を選択するということの意味と日本でインター校を選択する際の注意点などについて書いてみたいと思います。

➀シンガポールのインター校

インター校と一口に言っても、大きく分けると二つの種類に分けられると言えます。
一つ目は、ある国の教育カリキュラムに沿って授業を進めていく学校です。それは例えば、米国式のカリキュラムで授業を進めるアメリカンスクール(APを採用しているという点でアメリカシステムといえる)であったり、英国式のブリティッシュスクール(シンガポールの場合はタングリントラスト、GCSE、A Levelを採用しているという点で英国システムと言える)、リセのような、フランスのカリキュラムに沿った学校などです。日本国外の日本人学校もその一つです。日本政府の教育カリキュラムや、指導要領に沿って授業を進めていくからです。

そしてもう一つは、いわゆる「インターナショナル」のイメージにぴったりとも言える、いろんな国の子どもたちが共に学習する学校ですが、シンガポールの場合、その多くがインターナショナルバカロレア(以下、IB)を採用しています。

英語媒体のインター校63校のうち、40校がIBを採用している学校であることを勘案すると、いかにIBカリキュラムが浸透しているかが分かりますね。さらに、シンガポールの場合は、ローカル私立学校のインターナショナル部門ともいえるインター校もありますが、それらの多くもIBを採用しています。

つまり、シンガポールのインター校は、多くが明確なカリキュラム設定の下で授業を進めているのです。この後、日本のインター校を選ぶ際の注意点についても書きますが、次はインター校を選ぶこと、そのものの意味について考えてみたいと思います。

②インター校を選ぶということの意味

まずは、我が家の場合のシンガポールにおけるインター校選択の理由から話を始めましょう。我が家の場合、シンガポールで生活を始める前にはアメリカに滞在していたことから、娘にとって授業は英語で受けることがすでに定着していたため、シンガポールでも英語で授業を行っている学校に選択肢を絞りました。

その選択肢はアメリカンスクール、アメリカでは現地校に通学していたことからローカル校、そしてインター校らしいインター校としてUnited World College South East Asia(以下、UWC)が考えられました。

この三者のうち、選択肢から最初に消えたのは現地校でした。それは、最初はまった英語を話せない状態でアメリカの幼稚園に放り込まれたことで大変なストレスを感じた後、英語での学習が身についた娘に、さらに中国語を必ず学習言語としなければならないことを強制したくなかったからです。

娘は結果的にはUWCで中国語を外国語として学ぶことになり、上級レベルまで学習しましたが、小学生の時点からテストを課されて学ぶのではなく、クラスメイトと共に楽しみながら学習を続けていきました。大学生になってからも中国語を学びなおしていましたから、その学習のきっかけが小学生にあったことはよかったと思っています。

このように言語数を増やすことに対する懸念は、ローカル校を選択しなかった理由の一つではありましたが、何より、我が家の教育方針である「小学生は遊びの中から学ぶもの」という思いを現地校では実現できそうにないと考えたことから、現地校の選択はなくなり、アメリカンスクールも、「ここはアメリカではないからアメリカシステム以外のカリキュラムの学校を選ぼう」と夫婦で話し合って選択肢から外しました。

この一連の学校選択の中の流れをご紹介したことで、ご理解いただけたかもしれませんが、第一に「インター校」とは、どういうところかというと、「英語を学ぶところ」ではなく、「英語で学ぶところ」です。

たまにインター校を英語学校と間違っている方々もいらっしゃるように見受けられ、子どもをインター校に通わせていると英語がうまくなる、と勘違いされている方々がいらっしゃるようですが、その中で失うものもあることを忘れてはいけないと思います。

次に、もし保護者の中に言語数を多く学ぶことが、将来の仕事により多くのチャンスがある、もしくは単純に「格好いい」ことという考えをお持ちであるなら、それは必ずしもその子どもにとって利益となることなのかどうかはわからないことも、よく肝に銘じておく必要があると書いておきたいと思います。

言語はその背景にある文化を同時に受け入れることです。たとえ英語と中国語他といった、シンガポールの公用語を学べる教育機関としてローカル校の存在をとらえたとしても、それが果たして正しい選択なのかどうかはよく考える必要があります。

我が家の例を基に注意する点を書きましたが、これは必ずしもすべての子どもに当てはまるわけでもなく、各ご家庭の方針をよく見つめ直してほしいとお伝えしたいのです。

ローカル校が良くない選択で、インター校が良い選択ということを伝えるものでもありません。そして何より、日本人家庭の子どもが日本人学校以外のインター校に通うということは、サードカルチャーキッズを生み出すことになることも忘れてはならない重要なポイントです。

サードカルチャーキッズとは、親の文化とは違う文化の中で育つ子どもたちのことを意味します。子どもなりの文化の中で育つメリットもありますが、長じて自分のアイデンティティーはどこにあるのかということについて悩むことがあることも忘れてはならないと思います。

シンガポールのインター校は、親の文化とは違った文化の中で育つのみならず、シンガポールという国の文化とも直接のかかわりのない、バブルの中で育つことになるのです。せっかくシンガポールに住まいを構えていても、シンガポールのことは何も知らないままになる可能性もあるという危険をはらんでいます。

ただ、親の文化との違いを感じることなく、何も悩まず、自分とは何かとも考えず、自分を見つめることもなく成長していくより、その違いを感じ、どう生きていくかを悩み、考える機会があることは、その子どもにとって人生を深く見つめることに繋がるのではないでしょうか。

③帰国先の日本でインター校を選ぶなら

さて、日本への帰国が決まりました。シンガポールから日本に本帰国になった時にも、シンガポールではインター校を選んでいたからと、日本でもインター校を選ぶ方もいらっしゃいます。上記②でも触れましたが、インター校を選択するにも、メリットとデメリットがあります。日本に帰国した際に、一旦英語で授業を受けることに慣れた子どもにとっては、日本語での授業に切り替えるよりは英語で授業が受けられることは魅力的でしょう。

でも、ぜひよく考え調べて選択してください。日本のインター校の中には、IBカリキュラムを標榜している学校も多くありますが、その実績がどうなっているかを事前に調査することは忘れてはならないことだと思います。IB校だからと、帰国後に子どもをそこで学ばせることに決めたものの、形だけのカリキュラムであったり、科目が揃っていなかったりする学校があると聞いています。

過去の実績をよくよく調べてから選択することは重要でしょう。優秀な外国人を即戦力として呼び込むため、長い時間をかけて外国人家庭の子どもたちの学びの場としてインター校を整えてきたシンガポールと違い、日本の場合はインター校はあくまで日本人の子どもたちが選択する学びの場としては主流ではなかったことがその理由なのでしょう。

ただ、この手のことは調べれば分かることなのですが、アイデンティティーとの関係から、もう少し深く考えて頂きたいことがあります。それは、インター校を選択するということは、日本に帰国したにもかかわらず、サードカルチャーキッズを継続することになるかもしれない、ということです。

インター校の生徒は、そこに作られた特別なコミュニティーの中で成長していくことになります。それは、周りの日本人の子どもたちが育つ環境とは違った、さながらバブルの中のような環境と言えます。

シンガポールのインター校も同じ状況ではあるのですが、もとより外国人ということでローカル校に通学するのか、インター校に通学するのか、外国人であることに変わりがないのと違って、日本では日本人の子どもたち達と同様の学校生活を送ることでファーストカルチャー(親と同じ文化)の中で育つことが可能になるはずです。

それにもかかわらず、サードカルチャーと言って過言ではない文化の中で子どもたちが育っていく中では、もしかすると日本という国を理解しない子どもたちを育てることになる可能性があることは忘れてはならないことだと思います。

まとめ

今回は日本人のご家庭に向けて、日本人学校以外のインター校を選択すること、そして、日本に本帰国が決まった後にもインター校を選択することについて、注意する点を書きました。選択肢が広がった現在だからこそ、迷うこともあるでしょう。

誰かにとって合わないことが、必ずしも我が子にも合わないとは限らず、逆もまた然りです。しかし、学校選択は、特に言語・文化をまたいでの学校選択は、子どもたちのアイデンティティーに多大な影響を与えることをよく考慮した上で、決定していただきたいと思います

我が家の例を伝えながら書いてきたのは、私が日本語、日本文学を指導する教師である前に、バイリンガルの子どもを育ててきた母親であること、その目線でお伝えしておきたいと考えることを書き綴るためです。どうか、目先のテストの点数や評判だけにとらわれず、お子さんの学びが遠い将来においても意味を持つよう、保護者の皆さんが考えるきっかけになればと思っています。

磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校のご紹介

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子供たちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。

様々な環境の子供たちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校は様々なコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

日本語文化継承学校の日本語教師募集

継承学校は、継承語として日本語を学ぶ子どもたちを応援する学校です。
一緒にそういった子どもたちを指導してくださる教員を募集しています。
詳細を知りたい方は、sjkeisho@yahoo.co.jp

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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