帰国子女の日本人学校出身者の進路とは―受験対策と強みを最大限に伸ばす方法をご紹介

海外で日本人学校に通う生徒たちは、日本国内と同等の教育を受けながら海外生活を送っています。その場合、帰国後の進路や受験準備はどのように進めるべきでしょうか?この記事では、日本人学校生の特徴や強み、進路選択、そして実践的な受験対策までを詳しく解説します。
日本人学校出身の帰国子女の進路と強み
◆日本語力や基礎学力の安定
日本人学校の最大の利点は、文部科学省の学習指導要領に準じた教育を受けられる点にあります。教科書も国内と同じものを使用し、学力の基礎づくりが徹底されています。そのため帰国後も国内のカリキュラムにスムーズに合流でき、学力差がほとんど生じません。
さらに、日本人学校の教員は文部科学省から派遣された経験豊富な教師が多く、少人数クラスで丁寧な指導を受けられる環境が整っています。子ども一人ひとりの学習進度を細かくフォローする体制により、学力の定着度は高く、日本国内の難関校への進学実績も多数報告されています。
◆受験の土台をつくる学習習慣
日本人学校では日々の授業・宿題・定期テストなど、日本国内のスケジュールとほぼ同じリズムの学校生活が展開されています。結果として、生活習慣と学習習慣の両面で「日本の学校文化」に則ったリズムが身につきます。
例えば、定期テストに合わせて計画的に学習を進めたり、授業ノートを整理したりといった習慣が自然と定着します。こうした「自分で学習を管理できる力」が、帰国後の受験勉強にも大きく役立ちます。
◆規律・生活習慣・学校適応力
日本人学校では集団行動のルールや時間厳守、礼儀、掃除などを重視した教育方針が導入されています。日本語での学校行事や協働活動を通じて、社会性やチームワーク力が育まれます。帰国後に日本国内の学校環境にすぐ適応できる柔軟性を持っている点は大きなメリットです。
◆帰国後に課題になりやすい点
一方で、 日本人学校では日本語中心の環境にいるため、英語力が伸びづらいという課題があります。現地校やインターナショナルスクールに比べて英語を使う機会が少ないため、リスニングやスピーキング力の維持には家庭での補習やオンライン学習が欠かせません。
また、帰国後に「英語ができる帰国子女」と見られる一方で、実際は英語力に自信が持てないという相談も多く聞かれます。英検やTOEFLなどの試験を利用して、計画的に語学力を補うことが効果的です。
日本での受験を見据えた日本人学校生の選択肢
日本帰国後の受験に関してはいくつかの選択肢があります。お子様の特性や能力を考慮してどの選択肢が合っているのか見極めるのが大事です。
◆日本帰国後の一般受験
日本人学校卒業生の多くは、中学・高校・大学進学時に一般受験を選択します。国内の教育内容と同一であるため、教科知識や試験形式にも慣れており、日本語での記述試験に強い傾向があります。
特に中学受験では、算数・国語・理科・社会を同時に並行して対策できる点で優位性があり、受験塾とも連携しやすいのが特徴です。一般受験でも日本国内の難関校合格例が多く報告されています。
◆帰国子女枠の利用
帰国子女専用の入試枠は、首都圏や関西圏の多くの学校で導入されています。英語力、国際感覚、海外での自立性や多文化への理解が評価される試験形式が一般的です。
日本人学校で学んだ生徒も入試資格の対象に含まれ、日本と同じような学習環境で獲得した安定した学力と精神的成熟が評価されやすい傾向にあります。特に小論文や面接では、「海外経験を通じた自己成長」を具体的に語ることが大切です。
◆私立・国立附属校の受験
附属校や私立校では、帰国生受入プログラムの整備が進んでおり、慶應湘南藤沢・早稲田学院・立命館守山などが代表的です。帰国生向け英語プログラムがある学校では、英語科目を中心に高得点を狙う戦略が有効です。国立附属校では面接で日本語表現力と学習意欲が評価されます。
◆海外大学・IB(国際バカロレア)認定校ルート
グローバル進学への関心が高まっている時代ということもあり、帰国子女の一部は日本国内のIB認定校や海外大学進学を目指します。英語での思考力・表現力を維持するためにオンライン講座や海外大学準備コースを利用するケースも増加しています。海外大学に挑戦するには、IBスコアやSATなど国際試験の準備を早期から始めることが鍵となります。
日本人学校出身者は英語力に関しては他のインター校などと比べると弱みがある傾向がありますので、これらの進路を選択する場合は英語の対策を強化する必要があるでしょう。
日本人学校出身者の受験対策
日本人学校出身者は日本の学校と同じような学校環境の中で学習をしてきたため、日本での受験に強みを持っています。しかし、海外という異なる環境にいたことから、早めの対策が必要なものもあります。
◆出願資格・科目・時期の確認の徹底
帰国子女入試は学校により「海外在住期間」「帰国時期」「現在の在籍校種」などの条件が異なります。例として、早稲田大学本庄高等学院では「海外在住2年以上・帰国2年以内」という明確な条件を設定しています。各校の募集要項を早めに確認することが、受験計画の第一歩です。
◆国語力のさらなる向上
国語の読解・作文力は日本人学校生の大切な強みとなります。しかし実際の入試では、「論理的に考え自分の意見を日本語で明確に伝える力」が問われます。ただ日本語が読めるということではなく論理的思考力やそれを分かりやすく伝えるという能力も重要です。
新聞記事や社説の要約練習、ディベート形式の学習などを通して、表現の幅を広げておくと小論文・面接対策にもつながります。
◆数学・理科・社会
数理科目の基礎力は高い傾向があるものの、教科間の進度のズレが生じることがあるため、オンライン教材や帰国子女向けの塾で補強しましょう。近年は日本の中学受験に対応する講座を海外でも受講できるようになり、現地でも効率的に準備する手段が増えています。
◆英語力
英語力は帰国生と日本で育った生徒との差別化要素として重要ですが、日本人学校の場合はプラスアルファの対策が重要です。英検準1級以上やTOEFL iBT80点を目指せば、帰国子女入試での強みとなります。
家庭学習では「多読」「オンライン英会話」「リスニングシャドーイング」などを生活リズムに組み込みましょう。
◆面接・小論文・活動実績
帰国子女入試では、学力だけでなく「海外経験をどのように成長に活かしたか」が重視されます。学校生活・課外活動・ボランティアや異文化交流など、具体的なエピソードを忘れないうちに事前に整理しておくと面接時に自信を持って話せます。細かいことは忘れてしまうため、日記などに簡単に書き留めておくことが重要です。
保護者ができること
受験はお子様が主役ではありますが、保護者の方のサポートがあることでお子様もより心強いと感じることでしょう。ご家庭で無理のない範囲でサポートしましょう。
◆最新制度・学校情報の収集
保護者の方が主体的にできるサポートとしては、学校の情報収集が挙げられます。入試制度や学校情報は毎年更新されます。国内外どちらにいても参加可能な説明会やオンラインセミナーを活用しましょう。2025年にはJOBAや駿台海外校などが帰国生向けの個別相談会を全国および海外主要都市で実施しています。
◆家庭でできる学習環境づくり
帰国子女の入試では海外での体験も重視されますが、日本語の力もみられています。家庭では日本語と英語の両方の対策を意識した環境づくりが重要です。現地ニュースの日本語版・英語版を一緒に読む、学校の話題を日本語で共有するなど、言語の切り替えを自然にサポートできる工夫が効果的です。
◆精神的フォロー
長く海外に生活していると、帰国直後は文化の違いや友人関係の変化からストレスを感じるお子様も少なくありません。結果だけでなく過程を褒め、家庭内では安心できる会話の時間を確保しましょう。心理的安定が学習意欲を支える最大の土台です。
◆同じ帰国生家庭との交流
他の帰国子女家庭とのネットワークは、入試情報共有や精神的支えになります。オンラインフォーラムやSNSコミュニティを通じた情報交換、同級生家庭との交流会などが心強い味方になります。
帰国後の進路選びで未来を広げる
日本人学校で培った堅実な学力と規律、そして海外で得た柔軟な思考力。この二つを兼ね備えた帰国子女は、国内でも海外でも大きな可能性を持っています。課題とされる英語力も、早期の準備と継続的トレーニングで十分に伸ばして対策できるでしょう。
帰国後の進路については「どんな環境でどんな自分を育てたいか」を基準に考えることが最も重要です。子どもたちが海外経験を誇りとして新たな一歩を踏み出せるよう、家族みんなで伴走していきましょう。
●記事内容は執筆時点の情報に基づいています。
【関連記事】
最新情報をLINEとメルマガでお届けしています!ぜひお友だち追加・フォローしてください。





