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【連載第2回 海外子育て】日本での子育てとの違い

磯崎みどりです。1月の掲載以来、家庭の事情でしばらくご無沙汰してしまいました。実は、NY在住の娘夫婦に子どもが生まれ、私はNanaになりました!出産前後の手伝いのためNYに長期滞在しており、戻ってきてからは日本の冬季、私の両親をシンガポールに呼び寄せ介護をしていたことで、記事の執筆から離れていました。

そして、生まれて3か月を迎える前に孫を連れて娘夫婦がシンガポールにやってきたことで、新しい命と介護を受ける高齢の両親と私たちの四世代が一堂に集ったことで、しみじみと私たち夫婦、そして娘たち夫婦、さらには両親の生活に思いをはせ、海外で生活するとはどういうことなのかについて考える機会となりました。そこで、海外で子育てすることについて自分の経験や考えたことを書いてみたいと思います。

【連載 海外子育て】
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日本と海外の子育ての違いと保護者の心構え

幼少期

私自身の子育て経験のお話から始めましょう。私は日本で娘を出産した後、娘が3歳までは日本で子育てした後、米国に移住。これは夫の国費留学に帯同しての移住でした。その2年後、再就職を考える夫が米国で職を得たことで、結局5年間、コネチカット、バージニアと2州に滞在しました。その後、今度は夫がシンガポールでの職を得たため、家族でシンガポールに移住、10年間の子育てをシンガポールで行いました。

日本と海外の子育てを比較するには、あまりに私の日本での子育て経験は短いもので、その上幼児期に限定されるものですが、私は本当にラッキーだったと言えます。娘は日本にいた時も米国に移住してからも、遊びたいと思って外に飛び出せば、そこには子どもたちが遊ぶ道や公園があり、遊びたいだけ遊ぶことができました。ただ、それは夏の間だけだったと分かったのは秋になり幼稚園や学校が始まった時でした。夏が短いコネチカットでのことだったのかもしれません。あっという間にお友だち同士で約束をして室内で遊ぶことが中心となりました。でもこれは、今や日本でも当然のことのようですから、比較するに値するとは言えないですね。ですから、私の経験だけを見れば、幼児期の子育てには大きな差があるとは言えないように思います。

ただ、たったの3歳だったとは言え、娘はすでに日本語でお友だちとコミュニケーションを取るのが楽しくて仕方がない域に達していたため、英語での生活に切り替わるには苦労がありました。幼ければすぐに慣れる、というのも個人差もあり、必ずしも正しい見解ではありません。親が我が子の言葉の習得に目を光らせておかなければならないのは、幼少期であっても重要だと考えます

一つ大きく違うかもしれないのは、シンガポールでの幼少期の子育てです。ヘルパーに子育てを助けてもらいやすい環境であることは、シンガポールでの子育てのメリットの一つといえるかもしれませんが、それは、場合によっては日本語の習得が遅れるといったデメリットもついてきてしまうかもしれないことは注意点となりえます。

学童期(小学生)

その後の小学校になった娘を育てる上で感じた海外での子育ての違い(主に、自分が日本で育った時との違いになります)やメリットとデメリットの両方を挙げてみたいと思います。

まず海外での子育ては、子どもが学校で成功できるためには、親が学校と強い関わりを持つことが鍵となると言えます。小学校の学童期は、保護者がボランティアとして学校に関わることで、先生が子どもたちへの対応に目を光らせ、また、どれだけ我が子が授業を吸収して帰ってくるかもわかるため、ボランティアをできるならやった方がよく、それが子どもにもフィードバックされるのは、海外の学校ならではではないでしょうか。

日本でも有名校など、親の関わりが大きな意味を持つところもあるのかもしれませんが、例えば米国ではボランティアをしている親の子どもから優先的にさまざまな代表に選ばれるということはよくあることです。そして、シンガポールのローカル有名校は、親がボランティアをすることで優先的に入学させてもらえるというところもあるそうです。

ちなみに、私は米国の公立小学校に娘が通学していた時には、校長先生、教頭先生を初めとした担任以外の教員のほとんどに顔が利くほど、毎日のように学校に出入りしていました(学校が自宅の裏だったため、仕事の合間を見て歩いて3分以内に到着する学校にできるだけ顔を出していました)。PAの役員にもなりました。また、シンガポールのインター校でもボランティアを求められる間(小学部の間でした)は、できる限り仕事の合間を見てボランティアに通い、担任の先生たちとの距離を縮めることに注力しました。そのおかげで、先生方の覚えめでたく、小学校の間はいろんな面でボランティアとして学校に出入りすることのメリットを感じました。

一方、学校内に長時間滞在することがあったことで見えていたことは、よく「日本ではいじめがあるけれど海外ではいじめはない」ということを言う方や、書かれた文章を読むことがありますが、それは事実とは異なるということです。

海外子育てのデメリットともいえることになりますが、子どもたちが日本で育つのとは違い、日本人の子どもたちは外国人として育つことになり、場合によっては人種差別を受けることもあります。それは、クラスメイトから「お弁当に変なものが入っていると言われた」と言ったような文化に関わることから、体が小さいこと、英語の発音が異なると指摘されること、また、現地の言葉を習得できていないためにうまく気持ちを説明できないために手が出てしまって、さらにはそういった理由をうまく説明できず、一方的に先生に怒られるといったこともあるなど、さまざまです。

相手が話している言語が習得できておらず、内容がわからないうちの方がトラブルに巻き込まれること、逆に、少しわかるようになってきたときに心を傷つけられてしまう子どもたちもいます。小学校によっては、先生の質の問題もあり、先生が子どもを差別し、いじめ側に回る元凶となる場合も見てきました。このようなデメリットもあるわけですから、海外で子育てすることになったら、親は日本にいる時以上に子どもたちの様子をよく見て気にかけるようにしておくことは重要でしょう。

ちなみに、私は娘が小学生の頃に米国の公立小学校でボランティア、PA役員を務めたのみならず、シンガポールの国際校では、娘の卒業間際のIBの2年間には日本人コミュニティーを代表するPA役員を務めました。この役割を果たしたことで、卒業まで学校側と密に連絡を取り合うことができ、卒業式にはPA特別席を準備してもらえるという栄誉まで与えられました。

第1回の連載時に書いた、英語を習得することの大変さやその反面習得できた時には今度は日本語を習得することが難しくなることなど、言語面では子どもたちも苦労をすることになると思いますが、しっかりとバイリンガル(トリリンガル以上の場合もありますね)として言語を身に着けることは、後々必ず活かされます。将来バイリンガルとして生きていくことを目標にすることをお子さまと一緒によく話し合い、二言語(以上)の生活をすることを習慣化するのは、小学生の時期だと思います。

思春期(中学生以上)

皆さんは、「サードカルチャーキッズ」という言葉を聞かれたことがあるのではないでしょうか。親の文化圏とは違う国で育つ子どもたちのことを言い、次のように定義されています。

親の転勤や国際移動に伴い、成長期の大部分(主に幼少期〜思春期)を両親の母国(パスポート文化)とは異なる文化圏で過ごす子どもたちのこと。1つ目の文化(親)と2つ目の文化(居住国)を融合させた、第3の独自の文化を形成して育つのが特徴。

彼らの海外生活にはメリットとデメリットがあります。

ただでさえ心が揺れる思春期。自分とは何か、を考えることで、いわゆるアイデンティティクライシスと呼ばれる思いを抱えることがあります。これは、必ずしもデメリットとは言えないかもしれませんが、自分が何者かわからなくなることは、苦しみを味わうことにもなりえます。具体的には、親の価値観と子ども自身の価値観がぶつかり合うことがあり、それによって何を指針とすればよいのかがわからなくなり、一人でそれを抱えることもあるでしょうし、親子喧嘩が絶えない状態になることもあるでしょう。

親元にいるのは高校生までのことが多いですが、親元を離れ大学生になった時に、また新しい大学コミュニティーという環境の中に入ることで、これまでの自分の抱えてきた生き方と、周りの友人の生活が違うことに気づき、そこで考え込んでしまうこともあります。敏感で、よく考えることができる子ども程、大きなクライシスを感じることがあるようです。

もちろん、多くの文化に触れながら育つことは、真のグローバル人として育つことになり、理屈抜きに多様性を受け入れることができる人間として育つ可能性があり、それは大きなメリットです。でもその一方で、一つの文化の中で疑問を持つこともなく育ってきた周りにいる同年代の友人たちとの違いを強く感じることがあるのは、メリットともデメリットともなりえます。

海外生活がどの程度の長さなのか、子どもがいくつの時からの海外生活なのかで子どもの受け止め方は違ってきますが、もし海外滞在が学童期から思春期までのそれなりの長さの期間になる場合は、何が「我が家の価値観」で、それは他の家庭の価値観とは違うかもしれないことを子どもと話し合い、親として何が譲れることで、何が譲れないことかを話し合っておくことは重要なことだと考えます。

海外の子育てから学ぶこと・魅力

私は日本で子育てをしたのは、結局娘がごく幼い間だけだったため、日本での子育てと比較してお話しすることはできないことは上記した通りですが、子育ての中から学んだことは、おそらく日本にいれば衝突することがなかったであろう、娘が自分で作り上げた新しい価値観との衝突があったということです。

日本の中にいても他の家庭と自分の家庭の価値観は違う中、さらに国籍の違いにより、その価値観の多様性は、言葉で説明しきれません。同じ場所で子育て中の、それぞれの日本人の親を持つ(それは両親である場合も、片親である場合もあり得ます)子どもたちの様子を見ていても、日本の文化を大切にしているご家庭から、日本なんてここに居れば関係ないでしょう、とまったく日本については気にかけないご家庭で育つ子どもたちまでさまざまです。

だからこそ、保護者は「自分はどんな子育てをするのか」を意識し、例えその時にその強い意志が子どもの新しく得た価値観と衝突することがあっても、親として継承したいと考えることについては伝えていくこと、それは私にとっては大切なことでしたし、その強い思いを持ったことが子育てから学んだことだったと感じます。そうでなければ、周りにある多様な価値観に流されていたのではないかと思います。

そういった頑な気持ちを持ちながら生活することは、時には親にとっても苦しみとなるかもしれませんが、親が自分で体験してきた環境ではない中で、子どもと共に新しい価値観を学び構築していくことは、大きな魅力とも言えるでしょう。

先に書いた「サードカルチャーキッズ」の特徴として、頭の柔らかさが挙げられます。多様な価値観を偏見なく受け容れられるのは特徴の一つと言えるでしょう。広い視野で世界を眺めることができ、一所に帰属することなく、世界で活躍する大人に成長していくことは、理想の「グローバルシチズン」を作り上げていくことになると言えます。

実際、娘も自分は「○○人」という、国に固定した呼び方で呼ばれるより「国際人」と呼ばれたい、と言っています。そんな娘が、今度はアメリカで育つアメリカ人を育てることになるのか、彼女の子育ても今後の私の楽しみになりそうです。

「海外での子育て」と言うと、すぐに言語習得のことが話の中心となりそうですが、実はどのような価値観の中で子育てするか、どうアイデンティティーを育てていくかということの方がずっと重要です。もし選択肢があるなら、メリットとデメリットの両方をよく理解した上で選ぶことが重要だと思います。英語が上手になるだろうと、(短期留学ならそういった考え方で臨んでも問題がないかもしれませんが)子どもにとっては、場合によってはすでに使用できている言語を奪われるのみならず、生活そのものに大きな変化がもたらされる訳ですから、親はそれに寄り添う覚悟を持ってほしいと思います。

海外子育てにおいては、各家庭の子育て方針が重要で、「我が家の場合」をしっかりと持ち、自分の知る価値観の中にいる時以上に子どもの成長に寄り添いさえすれば、我が子が新しい価値観を身に着ける素晴らしい大人として成長していける姿を見守れると信じています。

次回からは「海外滞在中の学校選び」について書きたいと思います。

磯崎みどり氏のご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。

アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語を指導。その他、Marlborough College (Malaysia)のIB Japanese A LiteratureのSSST (School Supported Self Taught)を指導。

英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。

自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。

日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子どもたちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。さまざまな環境の子どもたちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校はさまざまなコースを開催しています。

詳しくは、ホームページ

●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。

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