【連載第1回 インター校・現地校・日本人学校の選び方】シンガポールの各学校の特徴や注意点

磯崎みどりです。
学校選びについては、私自身の経験を「第3回IBDPと学校選び」としてにて一度ご紹介しています。
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今回は「シンガポールにおける学校選び」としてシンガポールの学校全般について書いていこうと思っています。
ただ、「現地校 VS インターナショナルスクール VS 日本人学校」でどれを選ぶかといったことは各ご家庭の事情によるものであり、私情に関わることなので、私自身の経験に加え、私が日本語を指導するさまざまな学校でお会いしている知る限りのご家族の例や、シンガポール政府の決定などを挙げ、それぞれのご家族がどのように学校を選択し、その中でどのような経験をされたかについてもお伝えし、参考にしていただければと思います。
第一回の今回は、それぞれの学校の特徴や注意点、メリットとなる点、またデメリットとなりうる点などについて書いていきます。
1)それぞれの学校と注意点
【現地校】
シンガポールでは「ローカル校」という呼び名で呼ばれるのが一般的なシンガポールの現地校。授業料や受け入れ方は、シンガポール国民、PR、外国人のいずれであるかによって違います。詳細はSingaLifeの次のサイトが詳細を教えてくれます。
この記事に書かれていなかったことで、一点、日本人家庭にとって大切だと思われる点は、言語面です。
以下、最新情報をお知らせしておきたいと思います。
第二言語は母語として中国語・マレー語・タミール語の一つを選択するのですが、そのどの言語にも精通する家族がいない場合など、日本語を第二言語としたいご家庭もあるでしょう。(SingaLifeにも、日本語を選択したご家族の例が挙げられています。
日本語は以前から母語としての第二言語登録が認められる可能性がある言語であり、上記三言語の選択を免除してもらえるシステムがあります。
ただ、現在、その免除には注意が必要です。と言うのは、PSLE(Primary School Leaving Examination)と呼ばれる小学校卒業テストの際に、上記三言語以外の言語を母語(第二言語)として選択していると、母語の点数は自動的に6から8とされてしまうことになりました(1が最高点)。
これは新しい決定として2019年に始まった採点方法で、我が子が日本語を選択できるなら中国語は免除してもらえる、とこの決定を知らないままで選択してしまうと、中学生になる際に希望する学校に行くには点数が足りない、ということになりかねないことは知っておく必要があるでしょう。
| シンガポール教育省(MOE)MTL exemption and the assigned MTL score for students exempted from MTL in the new PSLE AL scoring system | MOE |
また、日本語を母語として登録し、PSLEの成績が下げられてしまうことに納得したとしても、以前のように自習するのでは選択を許可されないのは、以下の説明内にもある通りです。
| シンガポール教育省(MOE)Exemption from taking a Mother Tongue Language | MOE |
私が運営する日本語文化継承学校(以下、継承学校)は、MOEの認める母語としての日本語を学習することが証明できる学校です(説明内にある、private study arrangementの条件を満たします)。多くの児童・生徒が第二言語を免除され、日本語を母語とする学びを継承学校で続けています。
【インターナショナルスクール】
日本で子どもをインターナショナルスクールに通わせていると言えば、一昔前までは日本の正規の学校に通わせていない、言わばはみ出し者の子どものような扱いをされるという話を聞いたことがありますが、現在は日本でも、ある時期から始まったインターナショナルスクールブームにより、すっかり一般的な学校として認められるようになりました。一条校と呼ばれる、日本の学校教育法第一条に正規の学校として定められているインターナショナルスクールも増えました。
なにより、シンガポールではインター校と呼ばれ、学校選択のための選択肢の中でも大きな位置を占めるものであることは、言うまでもありません。シンガポールには80校以上ものインター校が存在するため、それぞれの学校の特徴をよく知った上でお子様を入学させることが大切です。
インター校はどんどんと数を増やしているだけでなく、特徴もさまざまです。インター校として一つにまとめて話をすることは到底できません。その上、新しい学校がどんどん増えていることで、それまでの学校の評判もどんどんと変化しています。ですから、注意すべきは、噂で学校を選ばないことだと思います。
たとえ評判が良い学校でも、ご自分のお子様には合わないかもしれません。また、大人は納得する学校であっても、お子様には気に入らない学校になるかもしれません。子どもの言うことをすべて鵜吞みにすることを推奨するのではありませんが、親子共に納得いく学校選びが必要なのがインター校だと思います。
ただ、学校の変更(転校、編入)は、入学金の支払いを伴うため、強くお勧めするのではありませんが、私の知る多くのご家庭が、一旦我が子をあるインター校に入学させても、実際に通学を始めてみると決定的に合わないと感じた時点で、学校を変更されています。
日本の学校に通学させることと比較すると、学校の変更は気軽に行われているため、以下の大きくは3つのポイントを勘案し、時には転校を考えることが最良の選択であると言えます。
| ①英語力の変化 |
入学当初はお子様の英語力が低いため、英語補習クラスがある学校を選択したとしても、英語力がメインストリームと呼ばれる一般クラスに入れるようになったことで、同じ学校に通わせる必要を感じなくなることがあります。その時点で、転校を考えるご家庭が多く見られます。
| ②友人関係 |
これもお子様の英語力と関わることでもありますが、英語力が十分でない間、日本人の友人に助けられたというお子様がいる一方、日本人があまりに多く在籍する学校には入れたくない、というご家庭もあります。
私の指導している生徒の中には、在籍していた学校に日本人が多すぎたことが転校の理由だったという生徒がいます。日本人とばかり集うようになり、思うように自分の英語力が伸びなかったための転校だったと言います。こういった友人関係も転校のきっかけとなることもあります。
| ③カリキュラムの内容 |
我が子に最良と思って選択したカリキュラムも、学年が上がるにつれて合わない、と感じることもあります。特に、シンガポールでは高校卒業時点の最終試験にインターナショナルバカロレア(以後、IB)を導入している学校が最も多く、その一つ前のSecondary Schoolの卒業時点で(I)GCSE((International) General Certificate of Secondary Education)を導入する学校と、IBのMiddle SchoolレベルのMYPを導入する学校で、そのカリキュラムやテストへの対応は大きく違ってきます。
もちろんそれらをよく知った上で学校を選択するわけですが、実際に我が子に取り組ませてみたら合わない、と感じて学校を転校させたご家庭をいくつも見てきました。それが成功する場合もあれば、結局転校を繰り返し、最終的には同じ教育カリキュラムに戻すご家庭もありますが、お子様の学習への態度や学校との関係など、さまざまな面をしっかりと精査した上で、場合によっては転校を考えるとよいと思います。
【日本人学校】
日本人学校については次のSingaLifeの記事がよく分かる説明となっています。
追記するまでもなく、日本の教育システムに則って授業が進められるため、何といっても近い将来の日本への帰国に備えられることが最大の特徴です。シンガポールにはチャンギとクレメンティに小学校が二校あるため、シンガポール赴任が決まった時点で、居住地を決めるのにも大きな影響があります。
大規模のチャンギ校と小規模のクレメンティ校のそれぞれの良さを知り、お子様に合った選択ができるといいですね。
2)それぞれの学校を選択するメリットとデメリットとなりうる点
すでにご紹介したサイトの中でも、それぞれの学校のメリットについても書かれていますが、主に中高生を指導する私の見解から、生徒の様子やそのご家族のお話をもとに、それぞれの学校のメリット、デメリットとなりうる点について書いてみます。
【現地校】
今や、”Singapore Math”というと、かつて80年代から90年代にかけて日本の算数が注目を浴びた以上に、現在さまざまな国で導入されている手法で、私が最も驚いたのは、アメリカでまさに”Singapore Math”として、多くの小学校でその教育法が導入されているのを目にしたことです。
私は、娘が大学生になって以降ずっと米国在住の彼女のところを尋ねる度に、時間を見つけてはアメリカの学校視察に出向いています。それは日本語を指導する学校のみならず、現地の学校のカリキュラムについても学ぶためです。
大変指導しやすく、子ども達が容易に理解できる算数のカリキュラムとして、シンガポールの算数が導入されていることは事実としては知っていました。しかし、実際にそれを指導されているところを目にし、SingaLifeに次のように紹介されている”Singapore Math”が世界を魅了していることに感動したものです。
私の娘はインター校(United World College South East Asia)に在籍していたため、英国式の算数を学んでいましたが、自宅で”Singapore Math”の問題集を与え、それに取り組ませていました。リボン(Bar)を使って問題を視覚化する方法は、教える側の私にとって、とても教えやすい方法で、元々算数の文章問題が好きだった娘は、何の違和感もなく”Singapore Math”に馴染みました。
そんなシンガポール式の算数の問題集は、駅前やスーパーマーケットの前などで平積みにして販売していることも多く、懐かしのわら半紙を使ったような粗悪な紙に印刷された安い問題集は、簡単に入手できました。そのおかげもあって、かつてUWCでは算数だけは小学生の時からレベル分けされていましたが、娘は上級クラスに属していました。
もちろん、娘の算数のクラスには上には上がいました。クラスメイトの中の、問題を一目見ただけでインド式暗算でこなしてしまうインド人の女の子については、幼い頃の娘はなぜそんなことができるかが分からず、家に帰ってきてから「先生が、「はい、始めなさい」って言ったとたんに「はい、できました」って言って手を挙げる子がいるんだよ」と話した時には思わず噴き出した経験があります。
世界一を誇るシンガポールの算数を学ぶことができるという点で、ローカル校には大きなメリットがあると言えます。また、中華系の子ども達が大半を占めるシンガポールにおいて、第二言語(母語)として選択する言語が中国語(マンダリン)であることが多く、外国人であっても中国語を学ぶことになるケースがほとんどです。中国語の授業に遅れを取らないよう努力が続けられるなら、中国語も学べることとなり、英語、日本語に加え、中国語も習得する子ども達もいます。
それに、なにより、シンガポールという国家の指導の下で学ぶことで、シンガポールの国の一部となり、シンガポールについてより深く知ることになるのもメリットと言えます。
一方、デメリットとなりうるのは、徹底した学歴社会であるシンガポールにおいて、子ども達が学習そのものにストレスを感じることがあることです。
以前より進学に対する制限は緩和され、Secondary School(小学6年間の学習の後、4年間の中等教育機関)の後、高等教育としてJunior College(2年間の高等教育機関)ではなく、Polytechnic(実践的な職業教育を行う高等教育機関)を選択した後でも、大学に進学することができるようになっていますが、小学卒業テストの点数で中学校が決まるPSLE(Primary School Leaving Examination)は全小学生が強制的に受験しなければならないテストであり、社会が子どもの実力を超えて過度に学習面での圧力をかけることがあるのが問題を引き起こすことがあるのはデメリットになりうると言えるでしょう。
シンガポールの教育制度全般に関する記事としては、次のものが詳細にわたるまで調査されていて、お勧めできるサイトです。
【インターナショナルスクール】
インター校のメリットは、何といっても多国籍の子ども達とともに成長することで、多様性の中に我が子を委ねられることだと言えるでしょう。少なくとも我が家は、その点を重視してインター校を選択しました。
ただ、このメリットがデメリットとなりうる点でもあります。それは、学校内で子ども達の世界が完結しているため、ローカルとの接触が少ないことです。学校によっては、できる限りローカルとの交流を心掛けるところもありますが、やはりローカル校に通学するのとは決定的に違います。
我が家を振り返ってみても、在米期間中には娘を現地の学校である公立小学校に通わせていたことで、娘はいろんなアメリカの家庭の子ども達に出会い、アメリカのことを学びました。それに対し、シンガポールに滞在しながらも、インター校に在籍していると、シンガポールについてはほんの少ししか知る機会がありませんでした。
せっかく滞在した国についてもっと知り、友達を作りたいと言って、娘は高校を卒業して大学に行くためにシンガポールを出る前に、シンガポール政府が開催するイベントのいくつかに通訳として参加しました。
そこで出会ったローカルの参加者と友達になったことは、彼女にとって大きな出来事の一つとなりましたが、やはりよほど意識して機会を作ろうとしない限り、シンガポールに根差す友人を作り、シンガポールを知ることはなかなかできないのは事実です。
【日本人学校】
日本に2年程度で帰国することが決まっている場合、カリキュラムが日本と同じ日本人学校を選択するのが最良の策と言えます。子どもに英語が話せるようになってほしいと願い、せっかくシンガポールに来たのだから、と軽い気持ちでインター校を選択される保護者も見受けられますが、その選択も保護者次第ではあるものの、言語を奪われてしまうことにより、お子様によっては対応できず苦しませてしまう場合もあり得ます。
それは、そのお子様に英語に適応する力がないのではなく、日本語力が強く他の言語を受け付けないことを示していることが多いので、是非、お子さんの様子を見て学校選択をしてください。
2年程度、としたのには理由があります。年齢にもよりますが、子ども達は毎日英語で過ごすことが苦痛でない場合には、2年ほどで日常生活に困らないほどのレベルの英語力は簡単に身に付けられます。我が子が英語で話し始めたことで、もう日本語より英語の方が強くなった、と話す保護者もいらっしゃるのですが、それは大人になって通用するほどの英語力ではないかもしれません。そして、その英語も忘れてしまうことが多いのです。
つまり、学習言語として英語力を習得しない限り、外国語は忘れてしまう可能性があるので、インター校在籍期間が短い場合は、日本のカリキュラムに空白期間を作るのが良いのか、会話だけでも話せるようになっておくのが良いのかをよく検討する必要があります。
その点、日本人学校の英語クラスでも、しっかり学習しさえすれば、2年未満のインター校生活で身に着けられる英語への理解力は習得することができるのではないかと思います。
私は日本人中学校の英語会話教師を務めたことがあります。それは、ネイティブスピーカーから学ぶレベルに達していない生徒に、日本語で英会話を指導するクラスでした。生徒達の一部は日本から赴任したばかりの家庭の子女でしたが、日本人学校からの進学者もいて、彼ら彼女達は英語で話すことには抵抗がある生徒も混じっていたものの、その多くの生徒は単語力もそれなりにありました。
指示を英語で聞くことに難があることでネイティブのクラスに所属できないものの、自分が分かることを英語で話すことはできるという点では、それほどインター校に短期間在籍していた生徒と変わらないという印象を受けました。
以上、「現地校(ローカル校) VS インターナショナルスクール(インター校) VS 日本人学校」ということで比較してきましたが、どの学校カリキュラムにもメリット・デメリットとなりうる点があります。気になる学校は見学に出かけ、納得して学校選択してください。
そして、上記したように、どうしても選択した学校が我が子に合わない学校だと感じた時には、転校させることも視野に入れておくといいのではないかと思います。
磯崎みどり氏ご紹介

継承日本語指導者として、20年以上の実績を誇り、アメリカコロンビア大学大学院で継承語について研究、修士課程を修了。継承語学会海外継承日本語部会運営委員を務める。
アメリカ、シンガポールの補習校指導を皮きりに、現在シンガポール日本語文化継承学校校長。また、IBDP認定指導員として、日本語文学(Japanese A Literature)を指導。シンガポールではAIS(オーストラリアンインターナショナルスクール)でIBDP日本語文学、IGCSE相当の母語日本語、Tanglin Trust SchoolでGCSE、A Level日本語、IBDP日本語文学、NEXUSでIBDP日本語文学を指導。その他、Marlbourough College (Malaysia)のIBDP日本語文学を指導。
英語指導については、シンガポール日本人学校中学部の英会話クラス講師、早稲田渋谷シンガポール校英語教員を歴任。
自身がマルチリンガルの娘を育て上げた母親の一人。
日本語文化継承学校のご紹介
日本語文化継承学校は、日本国籍をもちながらも、海外生活が長く、早急な日本への帰国予定がない、もしくはシンガポールに永住する子どもたちを主な対象とした、日本語と文化の両面から学ぶことを目的とした学校です。
さまざまな環境の子どもたちにあった学びの場を提供するため、日本語文化継承学校はさまざまなコースを開催しています。
前期・後期の二期制で授業を進め、随時生徒を募集しております。
詳しくはホームページのお知らせをご覧ください。
●記事内容は執筆時点の情報に基づきます。
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